法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その⑪)

2013年8月10日 更新 

 前回まで特別受益とは何か・どの範囲の人が生前援助を受けたときに特別受益による調整が必要となるのかという話をしました。

 

 以前,遺産分割において生前の援助を調整するかどうかという点で

  ①問題にしている事柄が,生計を立てるためのお金をもらったということができるか

  ②他の相続人との取り分の調整を行う必要がないという亡くなった方からの意思表示 

   があったか

 という2つの点が問題になることを触れました。これまでの話は①に関わるものです。主には何が特別受益にあたるのかという話でした。

 こうした特別受益が存在していても,持ち戻し免除の意思表示が存在した場合には,原則として調整を行わないことになります。持ち戻し免除意思表示があるのかどうかというのが②の問題です。

 

 持ち戻し免除の意思表示があれば,原則調整は行われなくなります。ということは,当然調整がされる例外が出てくることになります。持ち戻し免除の意思表示があっても,遺留分を侵害することはできません。この意思表示は夫婦間では一部法律上したものと推定される場合がありますが,それ以外はなのかしら意思表示をしたものと扱われる必要があります。明確な書類を残していなくても構いませんが,亡くなった方の意思を確認するのは難しいため,明確な書類がない場合には意思があったと扱うのは難しくなります。遺言で明確にしておくのが一番便利ですが,遺言でないといけないというわけではありません。とはいえ,他の遺産に関する事項とともに遺言に記載しておいた方がトラブル防止とともに,遺言をされる方の意思を反映しやすくなる面はあります。

 ここで出てくる遺留分とは,ある範囲の法律で定められた相続人には,亡くなった方の財産の一定割合が確保されるように定められているという制度です。亡くなった方が遺言で財産を自由に処分しようとしても制約が加わる部分ということができます。実際に,遺留分の範囲まで自由に財産を処分した場合には,遺留分減殺請求権という権利を行使することで,財産の一定割合を確保することができます。

 遺留分自体複雑な制度ですので,いずれ詳しく触れたいと思います。

 

 先ほど触れましたように,持ち戻し免除の意思表示さえあれば,生前援助が特別受益でも遺産分割では調整されません。では,遺留分を侵害できないというのはどのような意味なのでしょうか?考え方として

 ①遺留分の範囲外では調整されるという意味と考えることもできます。

 ②先ほど触れた遺留分減殺請求権のように,権利を行使することで持ち戻し免除の意思  

  表示という亡くなった方の行動に制約を加えるのだと考えることもできます。

 

 このように考え方には対立がありますが,一般には②の考え方が取られています。ですから,持ち戻し免除の意思表示に問題があると考えるならば,遺留分減殺請求・遺留分侵害請求という権利を行使する必要があります。

 では,遺留分減殺請求・遺留分侵害請求はどのように行えばいいのか・行ったらどうなるのかという点が疑問として出てくるところです。遺留分に関しては,様々な背景事情から被相続人の生前に認められている家庭裁判所への遺留分放棄の許可の申立(こちらは遺留分を持っていて放棄の許可を求める方自身が申し立てる必要があります)があります。この申し立てをするように仕向けるという方法もありますが,あくまで真意で申し立てたのかが裁判所の審理対象(真意と評価できない場合には許可されない)というところがあります。言い換えると,指示できない部分がある(指示がありうることを想定して真意かどうかが審理される)点は被相続人・遺言をするかどうか生前対策を考えておられる方は頭に入れておいた方がいいでしょう。

 

 次回に続きます。

 

 

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