法律のいろは

相続で,亡くなった方から生前援助を受けたことは,どう考えるのでしょうか?(その⑫)

2013年8月13日 更新 

 前回,持ち戻し免除の意思表示というものについて触れました。今回はその続きです。前回の復習ですが,持ち戻し免除の意思表示とは,亡くなった方が生前に援助した部分を遺産分割で調整内でほしいという意思の表明です。遺留分を持つ方が,遺留分減殺請求をしないかぎり,完全に有効とという扱い(行使によって効果が覆る部分が出てくることもある)がなされていました。これはほかに遺産分割の話の中で当然に調整を図ることはできない(相続人同士が全員合意をすれば別)という意味です。

 遺留分減殺請求については,令和元年7月に改正された法律が施行され,遺留分減殺請求は遺留分侵害請求と名前を変えるとともに,遺留分侵害額に相当するお金の支払いを求める権利となりました。施行後に発生した相続については,生前贈与の効力は覆る部分はなくお金で調整をすることになります。

 これに伴い,生前贈与されたものをお金の支払いに変えて譲渡すること(代物弁済といわれます。遺留分の権利者の同意も必要です)をされた場合には,お金の支払いをするべき金額で譲渡したということでの所得税が発生します。

 

 では,持ち戻し免除の意思表示とはどのように行う必要があるのでしょうか?何かの方法による必要があるのか・はっきりと言わないといけないのかがここでの問題です。

 まず,何らかの方法による必要があるのかという問題です。生前に援助(贈与)をしていた場合には,どんな方法でもいいと一般的に考えられています。それどころか,贈与と同時でなくても後で意思表明をしてもいいとされていますが,何かにその意思表明を記録に残る形で残しておかないと,そうした医師が読み取れるのかどうかということで問題が生じることもありえます。

 次に,遺言で贈与するという遺贈の場合です。生前の援助とは少し違いますが,公平の観点から遺産分割での調整が必要と考えられるのは,生前の援助と同じです。生前贈与との違いは,遺言で行うという点です。それで何が違うのかという考えもありうるところです。ただ,一般には遺贈の場合には遺言が必要とされるところから,遺産分割の際に調整しなくてもいいという意思の表明も遺言でする必要があると考えられています。遺言をする際には注意しておきたい点ですね。

 

 次に,はっきりと調整は不要という意思を表明しないといけないのかという問題です。これは,はっきりとした意思の表明のない場合にも黙示の意思表明があったものとして扱っていいのかどうかという問題です。

 結論から言うと,そうした扱いをしてもいい場合があります。とはいえ,はっきりとした意思の表明がないのですから,扱ってもいい場合とは,それだけの事情がある場合に限られることになります。そのため,明確に表明をした方がいいことになります。法律改正で20年以上結婚してから経過した夫婦の間での居住用不動産の生前贈与については法律上表明がされたとの扱いが推定されています。この規定がないと表明されたかどうかの問題が生じかねないということも示しています。

 それがどういった場合なのか等の話は次回に続きます。

 

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