法律のいろは

離婚と子供に関わるハーグ条約(その②)

2013年5月26日 更新 

 前回も触れましたように,ハーグ条約は国際離婚の場合の子どもの連れ去りへの国と国との協力を定めたものということができるでしょう。もちろん,民事手続きだけです。

 

 ハーグ条約の内容として

 ①不法な子どもの連れ去りへの返還援助

 ②子どもとの国の枠を超えた面会交流の実現の支援

 が主な内容で,①がメインです。

 

 ①についてですが,対象となるのは16歳未満の子どもです。「不法に」ハーグ条約加盟国から別のハーグ条約加盟国に子どもが連れ去られた場合に,子どもの返還申立てができます。申立てをするところは,子どもを連れ去られた親の国・子供が連れ去られた先の国の中央当局に対してです。

 多くは,夫婦がもともと暮らしていた国・子供も暮らしていた国と連れ去った配偶者のいる国となるかと思われます。ちなみに,日本でもハーグ条約の加盟が見込まれているところですが,法案提出前の段階では中央当局を外務省にしようという動きがありました。

 

 ここでいう「不法」とは,子どもの常居所地の国の法律で,親の子供に対する監護権を侵害する場合が,子どもの利益に反しているからということで該当することになります。ここで,常居所地がどこなのかという問題がありますけど,子どもが連れ去られる前に生活の拠点を有していたところになる例が普通ではないかと考えられます。ちなみに,常居所地とは,曖昧な所がある言葉です。

 

 中央当局は,申立てがあると,子どもがどこにいるかを特定します。その後,夫婦同士で解決できるように,情報提供などの援助をすることになります。それでも解決しない場合には,子どもの返還命令の申立てを,子どもの返還を求める側が行うことになります。返還命令の判断をするのは,裁判所とする国が多いです。

 

 この条約は,子どもを常居所地に戻すことを原則としています。子どもが「不法に」常居所地から連れ去られるなどしたと認められる場合には,基本的に子どもを常居所地に戻す命令が裁判所から出されることになります。これが返還命令です。

 

 基本ということは例外があるということで,ハーグ条約では,子どもの利益の観点からみて,子どもを常居所地に戻すべきではない何個かの返還拒否事由がある場合には,子どもの返還を拒否することが出来ます。ここで重要なのは,あくまでも例外的な事由であるということです。

 いわゆるDVや子どもの虐待があった場合はどうなるのかが問題となるところです。そういった詳しい話は,長くなるため,また次回に触れさせていただきます。

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