法律のいろは

遺留分侵害額請求を受けた際の対応とは?遺留分減殺請求(法改正前)との違い。

2021年3月21日 更新 

 平成30年に相続関連の法改正が行われ遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求へと名前を変えるとともに権利の性質やその他いくつかの事項が変更されました。遺言や生前贈与(生前贈与はどこまでが対象になるのかは法定相続人かどうかで違いがあります)で財産の多くをもらうことになった方は,遺留分の権利を有する方の意向次第で請求を受け対応が必要になります。

 

 法改正前の遺留分減殺請求では,遺産に属する財産が遺留分(厳密には侵害している部分)に応じて共有となっていました。共有解消のためにお金の支払いをする・遺留分の侵害が具体的にどの程度までなのか(遺留分の具体的な侵害をどうするのかという点で見解の対立もありました)といった点を中心に争う方法がありました。後者はいくらお金を支払うのかという話しで,請求側も共有の状況が続き,特に不動産について共有物分割という手続きでの解消の負担もある点を考慮しての話し合いを進めていくということもありえました。

 

 法改正により,純粋にお金の請求へと変更されましたので,今後は具体的な侵害分がいくらになるのか・支払い期限を猶予してもらうという話しが重要になってきます。遺留分侵害額請求については,請求を受ける時点から支払い遅延になりますので,遅延損害金の支払い義務が生じます。民法の改正により令和2年3月までの年5%から同年4月から3%・その後は改訂が定期的に予定されています。以前に比べれば遅延損害金の負担は小さくはなりますが,超低金利の時代には相応に大きいため無視はできない程度になっているように思われます。

 遅延損害金については交渉による話し合いの中で減免を求めることや請求の裁判所での手続きの中で支払期限の許与を求めることが可能です。後者については支払い期限として設定したところまでは支払い遅延とはならなくなりますので,遅延損害金が生じることはなくなります。話し合いでの解決も当然可能ですから,こうした遅延損害金の取り扱い(請求側は時間がかかればこちらもつくという考えもあるでしょう。もちろん早期解決をしたいという意向もありえます。)は頭に入れておいた方がいいと思われます。また,共有ということがなくなったので,遺留分対策での懸念が減ったということはりますが,共有解消のための請求側の負担もなくなったために,ここを交渉材料としにくくなった面もあるかと思います。

 

 そもそも遺留分侵害額がどこまでなのかは先ほどの話では後者の点ですが,もちろん極めて重要になります。生前贈与であれば,1年あるいは10年(贈与をする方と法定相続人で遺留分侵害に至る状況になることを認識していたものであるかどうか)の期間内か10年になるケースなのかどうか・負担付き贈与の場合に負担の金額評価がどれくらいなのか・遺産における負債やご自身が支払った負債の金額がどの程度なのかをきちんと整理しておく必要があります。この中で,亡くなった方の生前の世話にかかった費用や何かしらの建て替え費用がどこまで考慮されるのかという問題があります。扶養義務の範囲というものが大きく考慮される可能性がありますから,考慮されるのかどうかという点には大きなハードルが存在します。いずれにしても,ここの部分の整理と計算をしたうえで話を進めていく必要があります。

 この整理の上で遅延損害金の話や共有の解消の話もなくなったことを念頭に入れて交渉などを進めていくことになります。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。