前回,持ち戻し免除の意思表示をどのように行う必要があるのかなどについて触れました。今回はその続きです。
何かの方法による必要があるのか・はっきりと言わないといけないのかについて,前者については前回触れました。はっきりという必要があるのかについては,はっきりとはいわなくても持ち戻しの免除の意思表示があったと扱われることもありうることまでは前回触れました。持ち戻し免除の意思表示はあくまでも遺産分割での生前贈与で特別受益と考えられるものの調整を不要とするもので,一度表明をしても自由に撤回はできます。これは遺言であってもほかの方法であっても変わりません。遺言以外の方法の場合には撤回したのかが後で問題にならないようにはっきりしておくことが,意思を表明する方の意向を反映しやすくなります。
はっきりと言わない場合を黙示の意思表示があったと言います。はっきりとはしないだけに,どんな場合でも認められるわけではありません。色々な事情を考慮する必要があります。また,はっきりとは言わなくても持ち戻し免除の意思表示があったかどうかが問題となる援助の種類には主として次のようなものがあります。
ア 学資
イ 子供の結婚の際の援助(持参金や支度金など)
ウ 亡くなった方が,自分の土地に無料で住まわせた場合に得た利益
色々な事情には次のようなものが考えられます。
①援助・贈与したものが何か,金額がどの程度のものか
②援助・贈与がされた動機や経緯
③亡くなった方や援助・贈与を受けた方の生活関係
④援助・贈与を受けた方以外の相続人と亡くなった方の生活関係
⑤亡くなった方や贈与・援助を受けた方・その他相続人の職業や経済状態,健康状態
⑥援助・贈与を受けた方以外の相続人が,亡くなった方から受けた援助・贈与の内容と
その部分について持ち戻しを免除する意志があったかどうか
これら①~⑥以外にもいろいろな事情が考慮されることになります。そのうえで,亡くなった方が,援助・贈与を受けた方(相続人)に対して,相続分以外に財産を相続させる意思があったと考えることができるかどうかが問題になります。こうした意思があったと考えることができれば,持ち戻し免除の意思があったと考えることができます。
様々な事情を考慮して意思を読み取れるのかどうかということになりますから,一定の事情があったことが即意思があったとは言えないということは注意が必要です。どうしても,意向を反映したいのであれば,可能な限り遺言その他はっきりとした意向を確認できる形を残しておいた方がいいでしょう。ほかのコラムでも触れている法改正で設けられた持ち戻し意思表示の推定規定は,あくまでも限られた場面でのみ推定をするということ(他はそう簡単に意思が読み取れるわけではない)ということですから,改正によって推定される場面以外で,持ち戻し免除の意思表示が認められやすくなったわけではありません。
実際,どのような場合に持ち戻し免除の意思があったと考えてよいのかという実例については,補足の話とともに次回触れていきます。
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