法律のいろは

養子縁組が無効になる場合とは(その③相続対策その他高齢の養親における縁組の意思や判断能力の考慮)?

2016年3月24日 更新 

 高齢者が養親になる場合の養子縁組には目的は様々考えられます。相続に関して特に養子側の意向や養親の方の判断能力もあって。相続に関連する紛争として問題になることもありえます。認知症やその他傷病により判断能力の低下(改訂長谷川式簡易知能評価スケールの点数が著しく低い・医療記録に認知症の記載がある・要介護度が高い,その他認知症が疑われる言動があるなど)場合には,養子縁組の意味を理解して親子関係を築くということが理解できないという場合もあります。相手の話に迎合するなどの話があると真に養親にその意思があるのかすらわからないケースがあります。

 養親になる方の状況によっては,一方では養子縁組をその養子となる方としたいという言動が存在する一方で別の場面ではそれと矛盾する言動が存在することもありえます。縁組に至る経緯やそれまでの付き合い(全く疎遠であった方とか縁組直前に付き合いが始まった方)が法律上の親子関係を築くという話と整合しない(というか通常そうしたことを考えるとは言いにくい)場合には,判断能力の低下につながる話があれば,縁組意思の否定につながりやすくなります。矛盾した言動が存在する場合に,養子縁組をする意思があるといえるかは難しい問題ですが,認知症の症状が進行して認知能力や記憶力に大きな低下が生じている場面での場合について,縁組をする意思が確定したものとは言いにくいことを理由に縁組意思を否定したものがあります。

 ケースごとの事情によりますが,判断能力の低下(医療記録や介護記録等にどのような記載があるかどうかは重要)や経緯・これまでの付き合いなどを踏まえたうえでの合理的な動機の有無などを考慮しての話になります。

 

 養子縁組で法律上の親子関係ができれば,扶養だけでなく相続人となります。相続税対策として基礎控除には法律上の限界があること・遺留分対策(一人当たりの遺留分を下げることで侵害になる可能性を減らす)・その他相続分を動かす(特定の方の相続分を増やす・減らす)ことも目的とはされますが,縁組意思の有無は重要なポイントになってきます。他のコラムでも触れましたように,縁組意思ありというには,親子関係を作り交流を図ろうという意思は必要になるので,全くの税金や相続対策のみというのでは無効になるリスクがあります。孫など既に親族関係などがある場合には,親子関係を作る意思が全くないという場合はないかもしれませんが,養親となる方の判断能力が落ちている場面では判断能力なし・意思がないという話につながる可能性も出てきます。

 

 前回触れましたように,病気などで判断能力が落ちているようなケース,養子縁組届自体に署名をしていないようなケースでは,無効となるリスクがかなり高くなってきかねません。少し以前の裁判例の中には,相続分を動かす目的での養子縁組は無効である・相続税対策を目的とした養子縁組は無効である,という事が争われたものが存在します。

 ここでの無効の根拠としては,こうした動機による養子縁組の場合には,社会一般上の養親子関係を作ろうとする意志がないことを理由とするものがあります。一般に養子縁組をする際には,こうした意思が必要とされていますので,先ほどの目的が存在することで,このような意思が存在しないと言えるかが問題となっています。

 実際には,こうした目的以外のものも併存することが考えられますので,単純に実際の親子関係の実質を全く生じさせようとしないとは言えないという点に難しいところがあります。裁判例の中でも,先ほどの相続税対策目的ではないかという点が争われたケースで,単に相続税対策目的があったからといって,直ちに実際の親子関係の実質を生じさせる意思がないとまでは言えないとして,養子縁組が有効であると判断したものがあります。

 とはいえ,後で無効のリスクを生じさせる点もあります。どのように財産を残すか等は,遺言等も存在するところです。リスクに対応し,ここでは触れていませんが税務上の問題点にも対応できるように,どのような対応がいいかは思案のしどころではないかと考えられます。

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