法律のいろは

自筆証書遺言書の保管となすべきこと等

2015年6月8日 更新 

 遺言書は,作成した後保管しておき,いざ相続が開始した後にその存在が確認できるようにしておかないと意味はありません。存在が知られないと,結局は遺言書に沿った遺産の清算などが難しくなるためです。公正証書遺言を除く種類の遺言については,相続があったことを知ってから,すぐに検認の手続きを家庭裁判所で行う必要があります。主に問題となるのは自筆証書遺言(遺言する方が自分で作成したもの)ですので,これを念頭に話を進めます。

 まず,検認は行わないでいると,法律上はペナルテイがありますから,相続があったことを知ったら,保管している方はすぐに家庭裁判所への申立てをする必要があります。家庭裁判所が,遺言書の現状を確認して偽造などを防ぐためのものといえますが,公の機関がこうしたことを確認したからといって,遺言が有効かどうか・実際に遺言者が作成したものといえるかを保障してくれるわけではありません。言い換えると,検認の手続きが済んでも遺言が無効と裁判所に裁判において判断されることは十分ありうるということになります。

 

 ほかのコラムでも触れていますが,自筆証書遺言の保管サービス(遺言をした方が法務局に保管申請を行い,自筆証書遺言を保管してもらうサービス)がスタートしました。このサービスを使う場合には兼任が必要でなくなります。これは,今述べた保管状況も不明(というか作成されたことに誰も気づかない)という状況を減らすために導入された面があります。この制度を使うかどうかは自由です。

 このサービスは法務局及び専門の担当官が関与することになり,形式面のチェックはしてくれます。通常ご自身で申請をしていて偽造ということは考えにくいので,偽造かどうかという問題が減ることにはなるでしょう。ただし,内容面で意味のない事項なのかどうか・解釈がどうなるのか・その他の無効原因(判断能力その他)を判断してくれるわけではありませんので,保管サービスを使ったから有効な遺言になるというわけでもありません。

 こうしたことがありますので,自ら遺言を保管している方は公正証書遺言や自筆証書遺言の保管サービスを利用していない限り,早目に検認の申立てをした方がいいように思われます。ちなみに,先ほど書いたように検認というのは単なる確認の手続きですので,検認の申立てをせずに遺言に従った各種の手続きを行ったからといって,そうした手続きが後で無効であると判断されるわけではありません。遺言が無効であると裁判で確認されない限りは,検認の手続きを行うことなく財産の配分などを行うことができます。
 なお,検認の申立ては誰でもできるわけではなく,遺言書を保管している方(必ずしも相続人に限りません,第3者も含みます)・遺言書を見つけた相続人の方ができることになります。検認の手続きの中で,遺言書は開封され,その状況等見た目の様子などが裁判所の記録に残ることになります。遺言書に定められた事項を行うのは,検認を行わずともいいという話を先ほどしましたが,通常は検認の手続きが終わってから行うのが大半です。

 こうした点を考慮に入れて,遺言書の管理や相続が始まった際の段取りを行った方がいいでしょう。

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