法律のいろは

遺言で配偶者の面倒をみることを前提とした記載をした場合の問題点とは?

2020年3月6日 更新 

 特にご自身で作成する遺言書の中で,子供の中の特定の方に遺産を残す前提として,残された配偶者の世話をしてほしいとする記載をすることが見受けられます。例えば,「〇〇は妻(〇〇にとっては母)と同居をして,生活がたちゆくよう最大限世話をしてほしい」というものが考えられます。

 その後,このケースで〇〇さんが同居や世話をきちんとしていくのかについて争いが生じた場合に,この遺言の効力がどうなるのかがここでの問題点です。

 そもそも,同居と世話を求める要望というようにも読めなくはありません。要望であれば義務にはなりませんが,別のコラムでも触れましたが,その境界がどこかは難しい面があります。同居して面倒を見るという記載を義務(負担)と理解することについて支障がないと判断した裁判例がありますが,可能な限りは具体化した方がいいでしょう。

 法律上「負担」と理解できる限りは,義務を課された方が義務を守らないからといって遺言効力自体は当然に否定されるわけではないという点です。

 

 こうしたケースでまず問題となるのは,先ほどの世話をしてほしいという内容がどのような意味を持つのかという話です。遺言で定めた義務を守っていないという話になれば,その内容によっては家庭裁判所に遺言の取り消しを相続人は求めることができます。そこでまず問題となるのは,義務といえる話なのか・義務といえるとしてどのような義務なのかという点です。先ほども,「負担」(法律上,一定の財産を渡すことなどに義務を付けること,渡す内容を超える義務はつけれません)なのかどうか問題にされたケースがあるという話をしましたが,義務の内容がどのようなものかがはっきりしていないと,守っていないのかどうかとその程度も明らかにはならないということになります。

 

 例えば,先ほどのケースのように「最大限世話をしてほしい」という話の場合には,どこまでが最大限なのかがはっきりしないというところが言えます。負担を課された側の現在の生活の中での最大限を客観的に見るのか・課された側の気持ちから見てなのか・世話を受ける側から見て最大限なのかなど,見方によってその内容は変わってきます。一応同居して生活について協力しているのであれば義務を守っているということもできます。問題になるケースの中には,同居はしているものの全く生活の世話をしてくれない・そもそも同居をしていないというものが考えられますが,前者の場合には,そもそも世話をどの程度していたのかという事実関係自体も争いにはなりえますが,全く世話をしないのがネグレクトの状態であったのであれば協力をしないとは言いやすくなります。お金を勝手に使うなどの行動や虐待に当たると評価できる行為があればなおさらです。結局,どの程度の世話に該当する事実関係があったのか・事実関係に争いのある場合証拠などからどこまでの事実関係が言えるのか,といった点から考えていくことになります。

 実際には遺言の取り消しの際には家庭裁判所が介在することがあり,違反があるのであれば,遺言書の内容に照らして・どのような違反にあたる事柄があるのか・その根拠となる証拠があるのかが問題になってきます。

 単に十分世話をしてもらっていないという抽象的な話だけでなく,事実関係や証拠資料を検討して違反があるといえるのかどうかをよく考える必要があります。言い分だけで証拠が特にない場合には取り消しが難しくなることも考えられます。

 

 

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