法律のいろは

解雇って?(その③)

2013年4月9日 更新 

解雇に関して,最後に懲戒解雇について触れておきます。

 懲戒解雇は,解雇の中でも異質なものです。従業員による大きな会社の秩序違反行為に対する制裁なうえに,従業員へも特に大きなダメージを与えるからです。

 「従業員が会社のお金を着服した」「従業員が勝手に会社に来ない日が続いている」等の場合には会社全体の秩序に関わることもあるかもしれませんね。

 「懲戒」という言葉自体が,会社が秩序を守るために,違反した人に制裁を科す行為です。一番いいのは,こうした制裁を科すことなく会社の秩序が守られればいいはずですから,社長としては可能な限りは従業員との信頼関係を作ったほうがよさそうに思えます。とはいえ,いい職場環境を作るには何かしらの威嚇が必要なのも言えるでしょう。

 こうした制裁をするには,就業規則に①どういった場合に②どのような制裁を受けるかを書いておくことが必要とされています。書かれた内容を従業員に知らしめるための手続きを取ることも同様に必要です。ちなみに,懲戒解雇は制裁の中でも最も重い制裁なので,他の制裁とは分けて,どういった場合になるのかは定めておいた方がいいように感じます。

 重要なのは,ここで述べたことは,制裁を科すために必要なことというだけです。実際に,就業規則で定めておいた会社の秩序に違反する行為が行われた場合に,制裁を有効に行えるかについてはもう一つ考えるべき点があります。

法律や裁判例上,制裁が有効かは,(1)制裁が客観的に合理的な理由を持ち(2)社会的に見て相当なもの,であることを要求しています。

 ならば,何が(1)や(2)にあたるのかよくわからないということになるでしょう。たとえば,「会社のお金の着服」でいえば,重大な違反行為ですから,制裁にはしっかりした理由があります。勤務が不良な場合にはある程度ひどい内容がないとしっかりした理由ではない可能性が残ります。こうした理由があって,外の従業員や仕事への影響が大きい・以前にも違反行為があったような状態があれば社会的に相当とされやすいでしょう。

 なお,以前にあった同じような違反への制裁と異なっている場合には,不当な処分とされるリスクがあります。

 懲戒解雇は制裁としては重いので,有効かどうか色々と問題がありえます。個別の事情によりけりですが,会社にとっても従業員にとっても大きなことであるのは間違いないでしょう。代表例はまた機会があれば触れたいと思います。

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