法律のいろは

相続放棄と包括遺贈を受けた際に遺贈を受けないこととした場合についての注意点とは?

2020年11月4日 更新 

 相続放棄に関して問題となる点として,法律で定める単純承認事由に該当するのかという話があります。よくあるケースとして,亡くなった方の未払い家賃やその他支払いを遺産(預金口座など)から引き出して支払いをする・葬儀費用を預金から支払う・アパートの賃貸借契約の解除といったものなどがあるように思われます。結論から言えば,いずれの場合であっても,遺産の処分という法定単純承認事由に該当する可能性の高い行為であるため,避けるように指導をする必要があります。少額であるなどの場合には相続放棄の申述申し立てをしても認められる可能性はありますので,リスクも説明の上でトライするのかどうかを判断してもらうというのもありうるでしょう。保存行為は単純承認事由にはならないとされていますが,あくまでも亡くなった方の財産保全行為であり,境界が微妙な部分もあります。先ほどのアパートの関係では契約解除が先行している場合には,明け渡しに応じること自体は問題はないのですが,家財の処分は保全行為とはいえない可能性がある点(というよりも,財産の処分に形式上該当する,特に賃貸借契約の解約を保全行為とは言いにくい面があります)には注意が必要です。

 

 ほかに問題となるのは相続放棄の期間制限と包括遺贈を辞退する場合の対応についてです。前者については,申述の際に相続の開始など自らが相続人であることを知った時期の記載が要求されますので,この記載により決まってきます。当初財産も負債もないから放っておいた場合で後になって保証債務など多額の負債があることが判明したケースでは裁判例上,そうしたことを知らないことについてやむを得ない事由を示すことができれば期間制限(予め家庭裁判所に申し立てをすることで期間を延ばすことができます。遺産が多い場合などです)に引っかからないというものがあります(ただし,一部相続財産があることが判明していたケースについて事後に負債が判明した場合には,期間制限のスタート時点は後ろに動かず期間制限にかかると判断した裁判例もあります)。こちらのハードルが相応の高さがあること・それまで疎遠であったことなどの事情や根拠資料をきちんと示す必要がありますので,聞き取りなどはしっかりと行う必要があります。ちなみに,ここでハードルが相当高いということがある場合には負債額にもよりますが,分割支払いあるいは自己破産の可能性も考える場合が出てくるかもしれません。

 包括遺贈は遺言でなされるものですが,拒否をすることはできます。ただし,特定の財産を遺贈される場合とは異なり,包括遺贈は法令上相続人と同一の権利義務を持ちますので,家庭裁判所に相続放棄と同じ期間制限やほかの要件のもとで申述手続きを行う必要がある点の説明などは必要となります。同じ遺贈であっても特定の財産の遺贈を受ける場合と包括遺贈の場合は扱いが異なる点には注意すべきです。

 遺言により包括受贈者になったという内容を知ってからが期間のスタートとなり,そこから3か月以内に家庭裁判所に放棄の申し立てをしないといけません。

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