法律のいろは

自分で書いた遺言の保管サービスが導入されました。その特徴と注意点は?

2020年12月4日 更新 

 令和2年の7月から,自分で書いた遺言を法務局に保管してもらうサービスが始まりました。このサービスを使う意味やそもそも自分で遺言を書く意味とは何か,保管をすることで遺言は有効性が保障されるのかなど気になるところがあります。

 

〇遺言書保管サービスとは?

 公証人の方に口頭で伝えた内容を書類として整理してもらう公正証書遺言ではなく,ご自身が自筆で書く自筆証書遺言を法務局で保管してもらうというのは,遺言書保管サービスです。国の機関に預ける形になりますが,無料ではありません。

 

 公正証書遺言は原本を公証人役場に預ける形になりますが,自筆証書遺言の場合には貸金庫に預ける場合はともかく,基本的に書いた方が保管をするのが基本でした。それでは,紛失や相続人などがだれも気付かないまま話し合いが進む(それによって遺言の意味が実際上はなくなる)・偽造がなされる(別の方が勝手に遺言を作る)というケースがありました。特に偽造かどうかというのは,遺言の有効性が争われる場合の代表例の一つです。

 こうしたリスクを減らすために,国が預かるという形をとるというのが遺言書保管サービスです。公正証書とはすみわけを図りつつ,自分で書く遺言についてのリスク軽減ということもあり,自筆証書遺言というもののみが対象になります。

 

 保管により遺言書の存在などが確認ができるため,自筆証書遺言で必要とされている検認(遺言をした方がなくなった後に家庭裁判所で遅滞なく行う遺言書の確認手続き)は不要となります。ちなみに,この制度を使う場合には遺言は封をしていていない必要があります。

 

〇公正証書遺言と自筆証書遺言のすみわけとは?

 最近多くの士業が遺言作成に関するサービス提供をしているように思いますが,多くは公正証書遺言です。これは,専門家(少なくとも公証人)が関与するため複雑な項目にも対応できる・遺言をする方の判断能力面で微妙な点がある場合もチェックをしてもらうことで(判断能力不十分であれば無効です),無効になるリスクを減らすことができるという点があるためです。

 

 自筆証書遺言には外見面で,自分で書く必要がある(基本的にはパソコンではなく辞書である必要性があります。財産目録はパソコンでも記載は可能ですが,各ページに署名と印鑑が必要など面倒な点もあります)。また,印鑑や日付の記載など外形面で要求される事項があり,欠けると無効ということで無効リスクがあります。また,記載内容が複数の解釈ができるとなると,解釈をめぐって争いになる可能性もあります。

 

 とはいえ,公正証書遺言を作成するのには,少なくとも公証人の方の費用が掛かりますし,その他専門家の費用もかかります。もちろん,財産が多い・複雑な内容を書きたいという場合であれば,それだけの費用をかける意味はありますから公正証書のメリットは大きいでしょう。これに対して,少額遺産で・さしたる遺言内容でない場合には,相談をしつつ自分で遺言を書くのも一つの方法とは言えます。

 今回の保管サービスの導入で,先ほどの形式的な面(日付や自筆かどうか・押印はあるのかどうかなど)については有効性が判断される(法務局での預ける真正の際に確認されます)ので,この意味では無効リスクは減ります。また,公正証書遺言の有効性との対比(無効リスクの対比)でいえば,公正証書遺言も実際には周りの方と公証人の方の打合せで本人確認が十分にできないケース(実際には相当少ないように思いますが)では無効になる可能性はあります。保管サービスを利用する際には,あくまでも遺言をした方本人が申請のために法務局に赴き・申請書を書くということもあるので,判断能力面やご本人が書いたのかどうかという点では無効リスクがむしろ減る面も出るかもしれません。なお,ここでの話はあくまでも無効リスクを減らす可能性のある事実が存在するという意味です。

 

 どう活用するのかは,遺言の金額や内容・遺言以外に使うスキームなど(ほかにスキームがあるほど費用をかけてきちんと専門家のサポートを受ける必要が高くなります)を考えて決める必要があります。

 

〇保管サービスを使う意味と注意点

 意味については先ほど触れました無効リスクが減る意味と遺言書をだれにも知られずに話が進むという点が考えられます。偽造をするというのも,書いたご本人が遺言者として申請をする(申請の際に本人確認を資料付きでなされます)ので,防げる点は十分あります。

 

 ただし,遺言書の書き方(遺言書として意味があるのかどうか・解釈がどうなるのか等)を法務局が指導してくれるわけではありません。また,先ほど遺言者自身が申請に行く点が無効リスクが減るという点を触れましたが,法務局で公証人のように判断能力面のチェックなどを積極的に行うわけではないので,法務局に保管をした≠遺言が有効であるという点は注意は必要でしょう。

 

 また,遺言は生前自由に書き換え可能なので,変更をした場合には都度保管の撤回や新たな保管をしておく必要があります。そうでないと,何が現在意味のある遺言なのか・項目なのかがよくわからなくなります。

 このほか,申請時に相続人になる方(氏名と連絡先)や受贈者(遺言で贈与をする場合の受け取る方,この氏名あるいは名称と連絡先)・誰に対して何を贈与するのか(相続させるのか)等の記載をきちんとしておく必要があります。保管されている遺言のデータ情報の開示請求や通知をする際にはこれらの情報が重要になるためで,ここの記載がいい加減であるとやはり遺言の存在が分からないままになる可能性も最悪ありえます。

 

 ちなみに,相続人の側(遺贈を受ける側も含みます)は相続開始前(遺言をした方の生前)には遺言書の内容を見ることはできませんが,自分を相続人などとする遺言書が存在するのかどうかという証明書の交付を法務局に請求できます。

 

 

 細かな管轄(どこの法務局に預けることができるのか・証明書の発行を請求できるのか)その他細かな点は制度の案内をご覧いただければと思いますが,活用の仕方によっては意味のある制度といえるでしょう。同時に限界となる点・公正証書遺言とすみわけを図った制度のようですので,ご自身にとってどちらで作成をするのが良いのかをよく考えた方がいいでしょう。

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