法律のいろは

親族への介護は相続に影響するのでしょうか(寄与分や特別寄与料)?

2013年4月23日 更新 

 兄弟姉妹の中でだえか一人が親と同居して介護をしている・その介護の奥は兄弟姉妹の配偶者によって多く担われているという話です。一つの例として,長男や長女だから面倒を見る(実際にはその配偶者,特に長男の妻が面倒を見ている)というのが考えられます。この場合に遺言で面倒を見てもらうことへの配慮をしてもらう・生前に援助をしてもらうことで配慮してもらうということもありえます。こうした事情がない場合に相続が発生した場合に(親が死亡した後に),遺産分割などで特に財産を多くもらえることがあるのかという話がここでの問題です。

 

 このうち,相続人については寄与分という制度があります。他のコラムでも触れていますが,被相続人(親)の生前に・特別の貢献をしたことで・被相続人の財産を維持,増やした場合に,その貢献を遺産分割協議の中で考慮しようという制度です。ここでいう特別の貢献のハードルが高く実際にはあまり認められないのではないかという話は触れていますが,仮に相続人の間で貢献なのかが争われた場合には,家庭裁判所での遺産分割調停の中で考慮されるのかどうか・考慮の程度を話し合い(最終的には裁判所判断)をする必要があります。親子間では扶養義務があるので,そこを広くとらえ特別な貢献を高く設定すると,認められる範囲は相当に狭くなります。

 世話をしていた分援助を受けていれば,対応する部分は特に考慮されなくなります。どこまでが対応関係があるのかという問題も出てくるでしょう。

 

 この制度は相続人に当たる親族(孫や甥・姪は当然には相続人にはなりません)であれば使える制度ですが,それ以外の方の場合には活用できません。相続人の配偶者が面倒を見ていた場合にその貢献を反映するための話はこれまでもありましたが,相続に関する法律改正によって,遺産分割とは別枠ですが,その貢献を反映させる制度が設けられました。それが特別寄与料の制度です。被相続人の親族ではあるが,相続人には当たらない方を対象とした制度です。

 特別寄与料の制度とは,遺産分割とは別枠で(相続人の配偶者は加わることはできない),一定程度の寄与があった場合に,それによって被相続人の財産維持増やした場合に,その貢献を反映したお金の支払いを求められるとするものです。法律の文言上は「特別の寄与」ということで寄与分と同じ言葉となっていますが,立法担当者の説明などからはそれとは異なる「一定程度の寄与」を超えればいいとされており,寄与分で要求されている寄与よりも低い程度が想定されています。程度問題で具体的にはどうかという問題はありますが,相続人に要求される水準よりも低くなる可能性はあります。また,無償で貢献をした(面倒を見た・生活費の援助をしたなど)ことが要求されるので,面倒を見てもらっているから,その対価としてお金をもらっていたという場合には,請求は認められません。対価といえるのかどうかが問題となりえます。

 特別寄与料の金額自体は,寄与の程度や期間などを考慮して決めることになります。ただし,遺産から遺贈の金額を差し引いた金額が上限となります。遺言で権利行使を制限することはできません。

 相続人に対して支払いを求めることになり,相続人との話し合い(負担は各相続分に応じてになります)を行って話がつかなければ家庭裁判所に申し立てて,最終的には裁判官の判断で決まることになります。特別寄与料は遺産分割の手続きとは独立しているので,遺産分割協議の内容によって影響を受けることはできませんが,請求できる期間が法律上決まっています。請求をする方が,相続開始・相続人を知ってから6か月か,相続開始から1年を経過した場合には家庭裁判所に協議に代わる処分(判断)を求められなくなります。

 

 このように,親族の介護を相続に反映させる点には制度もありますが,ハードルも存在します。

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