法律のいろは

遺言が無効かどうかが問題になるケースとは?(その③)

2013年4月26日 更新 

 遺言をせっかく書いたのに無効になる場合について,これまで遺言能力について触れてきました。

 遺言能力については,補足するところもあるので,各遺言のタイプごとに補足していきます。

 法律上,遺言には主に3つあるのですが,共通して問題になる点です。今回は,主要な3つのタイプのうち,自筆証書遺言について触れていきます。

 自筆証書遺言とは,遺言をする人が,遺言の内容全部と日付を自分で書いて,自分の名前を署名し押印した遺言のことです。遺言は,法律上,要求される事項が満たされていないと無効になるものです。自分で書いているか・日付や押印等に問題があれば,無効になるかが問題になってきます。

 その中でも,自分で書いているかどうかが一番問題になりやすい点だと思われます。自筆証書遺言は,字のごとく,自分で書いていることが要求されるためです。他人の手が入っている場合,その他人に多く財産を与えるという内容のケースが多いからでもあります。。。

 その中でも問題となるのは,

 ①遺言者本人の筆跡かどうか

 ②遺言者が書いたように見えるけど,書いたとされる時期に遺言者が自分で書くことができたかどうか

 ではないかと思われます。

 ①については,偽造されたのではないかという問題です。ここでポイントとなるのは,もちろん遺言者の筆跡と遺言書に書いてある筆跡が一致(類似)するかどうかです。

 業者に鑑定を頼むのも一つの手ですが,正確性に問題があると,いざ裁判になった時に鑑定が信用できないと判断される恐れはあります。同じ人でも健康状態や年齢で筆跡が変わってくることもあるので,遺言した人や偽造したのではないかと疑っている相手の署名など筆跡が分かるものを結構手に入れておく必要があるでしょう。

 ちなみに,鑑定は,鑑定に使う文字や書類によって微妙に結果が変わりかねない点が難点です。

 ②については,偽造の話に加えて・第3者が手を添えて自分の思うとおりに書かせたことも問題になります。自分で書くことができたかどうかは,当時の遺言者の病状等からわかることが多いです。医療記録や介護認定の資料などが一つのポイントになるでしょう。書いている場面を見たという人がいれば,いたにこしたことはありません。他人が書いたという場合には自書ではないので無効となります(ただし,現在は財産目録部分のみは異なります)。

 手を添えた場合について,裁判例によると,手を添えたとしてもあくまで遺言者の手伝いをしただけで,遺言者が思うように書いたという場合には,遺言は問題ないとされています。もちろん,最低限自分で書こうと思える状態にあることは必要です。あくまで手助けですから。。。ちなみに,裁判例は書いた跡から判断するとしています。

 いずれにしても,遺言の内容や遺言を書く前後の遺言者の振る舞いなども大きなポイントとなります。自筆証書遺言については,法律改正によって財産目録部分についてのみは自筆でなくてもよくなりました。そのため,他の方に書いてもらう・パソコンを使うことも可能ですが,署名と押印を各ページにする必要があります。偽造に関しては,遺言の封がいたまま保管されていれば可能性ありとなりやすいところですが,遺言者本人が申請に法務局に赴く必要がある(申請書も記載する必要がある)自筆証書遺言保管サービスの導入により,利用した場合には,この意味での無効が問題になるケースは減るかもしれません。また,自ら文字を書いて申請に赴くだけの健康状態があることなどから,判断能力面の問題が出てくる場合も減る可能性はあります(もちろん,他の誰かが強く介在していたケースでは異なることもあります)。あくまでもケースごとの事情によります。

 自筆証書遺言だけでも他にも問題はありますので,また触れたいと思います。

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