法律のいろは

遺言が無効かどうかが問題となるケースとは?(その④)

2013年5月3日 更新 

 自筆証書遺言について,遺言が無効かどうか問題になるケースを取り上げました。

 法律上,遺言は決められた形式で書いていないと無効にされてしまう⇒せっかく書いても意味がなくなるので,注意が必要なところです。自分で書くという自筆証書遺言でも同じです。今回は前回の補足です。

 分の手で遺言内容の全文を自書をしたうえで押印する必要があります。日付も記載しないといけません。法改正後に作成された自筆証書遺言については,財産目録部分のみは自筆で書かなくても問題ありませんが,各ページごとに署名(自分で書く必要あり)と押印が必要です。

 自分の手で,というところがありますので,パソコンで作成した場合には,自分の手では書いていません。ですから,基本的に無効です(現在は財産目録部分のみは異なるのは先ほどの通り)。ちなみに,普段からタイプライターを使っている外国人がタイプライターで遺言をした場合に,日本の法律でも自分で書いたということに等しいと判断した裁判例があります。この裁判例にもあるとおり,自分で書いたことが必要で,欧米の方など特別のことでもないかぎりは,自分の手書きでないと無効になるかと思われます。

 パソコンを使ってということなら,自分の手で書くという自筆証書遺言ではなく,秘密証書遺言等他の方法によった方がいいでしょう。

 同じく自分の手で書いていないという理由から,遺言した人本人が話したことを書きとるとか・録音するという方法も無効になってしまいます。この場合も他の方法によるべきでしょう。

 自分の手で書くということで問題となるのは,どの部分まで自分で書くのかという点です。特に,第3者が書いた図面や目録を遺言書にくっつけている場合に問題となります。図面や目録に書いているものについて相続が発生する場合には,図面や目録が重要部分と考えられるのではないかということです。

 主には,遺言で不利益を被る人(要はあまりもらえなかった人)から問題にされるところです。

 色々と裁判例のあるところではあります。単に遺言書にくっつけただけでは,遺言者以外の人の書いた部分が遺言で重要な部分として存在するので,無効と判断される傾向にあるように思えます。

 そうではなく,図面などに添え書きや指示書きをしておくなど,図面等の部分も遺言者の自筆で書いた部分と一体化したものであるようにしておくと,全体として自分で書いたと判断される傾向にあるような印象です。

 こうした問題は法改正後に作成される(令和元年7月施行ですが,この方式緩和は平成31年1月13日以降となっています)自筆証書遺言で財産目録(これを図面あるいは登記簿謄本を使って行う場合)については自書ではなく登記簿謄本を付けておく・目録をパソコンで作成する場合などでも問題はなくなりました(くどいですが,各ページに一か所署名と押印が必要です。いわゆる契印までは不要です)。

 前回の補足ですが,遺言をする人が高齢や病気の場合に,他の人が手を添えても遺言が有効になる場合があるという話をしました。筆跡から見ての判断ということにはなりますけど,無効と判断されるリスクもあるところです。ですから,公正証書など他の方法を考えた方が無難なように思えます。

 自筆証書遺言の形式面の無効原因は,自筆証書遺言保管サービス(封をした遺言は使うことができません)を活用する場合には法務局の担当官が確認します。このため,この意味での無効となるケースは減るでしょうけれども,有効性を保障するものではないことに注意が必要です。

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