法律のいろは

離婚と財産分与(その⑥)

2013年5月4日 更新 

 財産分与について,これまで何回か触れてきました。

 今回は,退職金について触れていきたいと思います。退職金は,賃金の後払いの性質をもつもので・勤続への功労という意味合いも持つものです。一時金や年金払いなど様々な形があります。何よりも,必ずしも退職金は企業にとっては義務ではなく,就業規則などで定めていない限りは支払いは生じないものです。

 先ほど述べた退職金の性質もあり,資産としての意味合いを持つところです。ですから,退職金の支給規定が勤務している会社にある場合には,財産分与の対象となるかが問題となってい来るところです。

 ここでの問題は,退職金はあくまで退職した時に支払われるものですから

 ①退職しない場合には,退職金の支給はないのだから,分与すべき財産はないのではないかということ

 ②分与すべきとしても,いつの時点の金額を基準とするのか

 と言ったところが,大きな問題となってきます。

 ①については,今はもちろん将来も支給されるかどうかわからないのに,分与すべきなのかという問題があるところです。特に,いわゆる定年退職まで期間がある中での離婚では,こうした問題に加えて,離婚後の期間に寄与はあるのか,といったことも問題となります。

 もちろん,離婚後の期間について寄与はないので,この部分を分与することにはなりません。とはいえ,別居(あるいは離婚)時までの寄与により発生した資産ではあるので,別居(あるいは離婚)時までの部分について財産分与をする必要はあります。この点について,退職金がもらえるかの見込みがない(もらえる確証がない)場合には財産分与の対象にはならないという裁判例もあります。財産分与の対象になるかどうかは裁判例は一致しておらず,様々な事情によると思われます。この点は詳しくいずれ触れます。

 

 ②についても,①と同様の考えから,将来の退職時点を基準にするのはおかしいのではという問題が出てきます。

 この場合に,退職まで期間があるのであれば,退職金支給規定から計算する・勤務す会社から別居(離婚)時で仮にに退職した場合の資料を取り寄せるという方法があります。こうすることで,別居(あるいは離婚)までの退職金額の大よそは計算すること自体は可能です。

 ここで問題となることが2点あります。一つ目は,結婚までの勤務期間をどう評価するかということです。

 この問題については,たとえば,結婚までに7年勤め・その後離婚までに7年勤めた場合には,年数で按分するという方法を用いることが多いように思われます。

 つまり,別居(あるいは離婚)までの退職金見込み額×7/14,で計算するということです。退職金見込み額が毎年均等に発生しているという考えにもとづきます。

 反論として,退職金は勤務するほど多く発生するのだから,均等に考えるのはおかしいというものがあります。もちろん,こうした考えによることも可能ですが,少数かなあというのが印象です。

 二つ目は,退職しないケース(大半がそうでしょう)では,現金として退職金が発生していないということです。つまり,退職金見込み額の半分を仮に支払うとしても,ないお金を支払うことはできないのではないかというものです。

 実のところ,この問題は大きいです。他の財産(特にマイナス部分)と差引してみて,ということになるのですが,金額が大きくなるほど一括での支払いは厳しいところです。この点は,結構複雑ですので,次回詳しく触れたいと思います。

 今までは,退職までの期間が相当ある場合(主に10年以上)を念頭に置いていました。これが数年後等いわゆる熟年離婚については,少し違った方法もあるところです。この点も詳しくは次回触れたいと思います。

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