法律のいろは

自筆証書遺言に記載する日付はいつの日を・いつ書くべきなのでしょうか?

2021年1月23日 更新 

 相続に関する法律が改正され,ご自身で書く「自筆証書遺言」の方式が緩和されたとの話がありました。ただし,実際には本文などは自ら書くことが必要ですし,日付や押印が要求されるなど形式面で遺言が無効になるリスクがあります。このうち日付については,最高裁の判断上遺言が成立した日(完成した日)を書くものとされています。実際にはその場で書くことはなく後で書くこともあるかもしれませんし,その際に後の日を書くこともありえます。そうなった場合でも一定の場合には遺言が直ちには無効にならないという最高裁の判断が令和3年1月に出ました。

 

 そもそも,遺言が成立した日とはいつを指すのでしょうか?裁判所の判断によると,内容・署名・押印と日付を記載した日になります。日付だけ後で書いた場合には,原則として日付を記載した日に成立をしたとされています。日付の記載をもって,遺言がいつ成立したのかを明確にするためとされています。問題になったケースでは,日付を数日後に書いたものの書いた日付を記載したというもので,これが許されるかどうかが問題となったものです(許されなければ遺言は無効となります)。先ほどの判断から,有効としています。

 この日付自体が後で書いた日と相違する場合はどうなるのかというのが問題になります。過去の最高裁の判断では,誤記であることと実際の作成の日にちが遺言書本文などから容易に明かる場合には,日付の誤りがあるからといって遺言は無効とならないと判断しています。問題となったのは日付に明らかな誤記が記載されていたケースなので,実際の日付と記載日付が異なっている場合に遺言が有効となる場合はかなり限られるように読めます。

 

 令和3年1月に,新たに最高裁の判断が出ています。問題となったケースでは判決の認定によると,内容や署名・日付を記載したあと数日して押印をしたというケース(当然,日付を記載した日にちである遺言書に書かれている日にちと押印をした日は異なることになります)になります。このケースでは,日付の記載が誤って書いたという話しではないので,先ほどの最高裁の判断をしたケースとは異なるため,日付について無効となる場合を広くとらえる場合には無効となります。実際に第2審までの判断はそうなっていますし,方式に異なると無効になるという点からすると整合するように思われます。

 しかし,最高裁の判断はこのケースの事実関係の下では直ちには無効とはならないと判断しています。事実関係は先ほど記載した点に加えて,遺言をした方が入院中に遺言書の記載や署名・日付の記載を行い,退院後数日して押印をしたというものです。実際に記載した日にちと押印日(遺言成立日)が異なっても直ちに無効とはならない場合がある理由として,日付などの記載が必要とするのは遺言者の真意の確保が目的だから必要以上に厳しく判断するとかえって真意の実現が図れなくなるという点が挙げられています。

 

 ここでいう遺言者の真意の実現という点をとらえると,例外となる場合は一定程度ありそうですが,どこまでかははっきりしていません。あくまでも内容や形式面がほぼ完成していたという点や押印が入院という事情から後になっていたとみられる点・押印時には判決文からは弁護士立ち合いであったという点も関係しているかもしれません。真にに基づく遺言書であることが担保されている場合がどのような場合であって,どこまで「直ちに」無効ではないといえるのかが問題になります。方式違反による無効リスクは大きなものがありますので,可能であればすべてを同じ日に記載するか日付の記載は後にしてその日を記載したほうが無効リスクは小さくなるでしょう。

 

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