法律のいろは

財産管理契約の意味と任意後見との関係。活用の仕方は?

2021年3月8日 更新 

  任意後見契約であっても財産管理契約であっても,後見をしてもらう方・財産管理をしてもらう方が元気なうちに万が一の場合の財産管理(任意後見の場合には身上監護と呼ばれる病院や施設での世話や日常生活の世話などをしてもらう内容を含む)をしてもらう点では同じです。判断能力が大きく落ちた場合に裁判所の強い監督のもとに財産管理や身上監護が行われる成年後見制度とは違いがあります。両者の違いは身上監護をその内容に含むかどうかという点です。

 財産管理契約には,単に本人のお金の引き出しや管理を任せるというものから,特定の目的のため・誰かしたの利益のために本人が亡くなった後の場合を含めたスキームを作るという形態もありえます。民事信託というここ数年注目され多くの士業の方・金融機関その他の方が取り組んでおられるのもここに含まれます。

 

 実際上はメリット・デメリットはそれぞれあり,どれか一つの方法をとれば他はいらないという話しでもありませんし,複数の方法をとる場合や仮に民事信託を使うとしても受託者(管理を任された方)と受益者(利益を受ける方)などの利益が対立する場合の対応をどうするのかなど,実際の財産管理が始まってから問題になる事柄もありえます。利益対立は任意後見の場合であっても成年後見の場合であっても生じる可能性はあります。

 筆者が聞く限りの話に過ぎませんが,成年後見に関しては自由度が低く裁判所等外部からの監督や関与が入ることを嫌い利用はそこまでは増えていない話があるとのことです。外部からの監督という意味では任意後見の場合には,実際の任意後見の開始(本人の判断能力が落ちた場合)には任意後見監督人(任意後見人という契約で自由に決めることができる管理をする方の業務を監督する方)の選任が必要でその監督がなされます。これに対し,民事信託を含む財産管理では監督は必須ではありません。信託監督人という方や受益者の代理人(厳密ではありませんが,財産管理から利益を受ける方の利益代表となる方)を信託行為(遺言や信託契約などで定めておく)で決めることができます。財産管理の監督機能が小さくなる可能性がある反面,財産管理については期間設定や目的・その他を相当程度自由に定めることができる点では大きなメリットがあります。

 身上監護という側面までは財産管理の対象にはなりませんので,ご高齢の親の財産管理・身上監護の対応には任意後見を含めた両方の制度を使うという対応方法も考えられます。特に本人が亡くなった後を含めた財産管理を行うのであれば信託という仕組みを使わないとできませんので,特に障がいを持ったお子様のためを含めた財産管理や財産引継ぎ(この意味で遺言の機能を含む部分があります)も行うことができるのが信託のメリットということができます。ちなみに,信託のスキームを活用した場合には信託の対象となる財産は本人の財産から外れますので(管理者の固有財産でもありません),これ以外の財産が任意後見人が管理する財産となります。

 

 実際にどのような方法を使うのがいいのか・特に個別の目的とメリットデメリットを含めてどのようなスキームがいいのかは専門家に相談をして決めておく必要があります。その際には信託についても遺留分の規制は及びますし,管理を受けるかやの負債リスクの点や責任・いつまで続き・どのような終わりを想定するのかなどをきちんと考慮しておく必要があるでしょう。

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