法律のいろは

相続放棄の際の注意点(相続税課税の関係)

2021年2月1日 更新 

 相続放棄を考える場面の多くは,亡くなった方に財産がないか負債の方が相当程度多いケースが多いものと思われます。そのため,相続税が課税されるというケースは基本的にはかなり少ないものと思われますが,それでも課税の可能性自体はあるというのが今回取り上げる注意点です。これ以外にも他のコラムで取り上げた亡くなった方の預金からお金を引き出しての葬儀費用の支出や賃貸借契約の解約には,相続放棄ができない事情があるのかどうかという問題もあります。また,相続放棄後の財産管理をどうするのかという問題もあります。

 

 相続税の課税は,遺産の評価額が基礎控除分を超えて存在する場合にはなされることになります。評価額には評価減やそもそもどう評価をどうするのかという問題がありますが,別のコラムで触れることになります。ここでの基礎控除とは,3000万円+600万円×法定相続人数で計算します。相続放棄をした方は最初から相続人ではないというのが民法上の取り扱いですが,ここでは法定相続人の人数にカウントします。相続税の計算の仕方の詳細はここでは触れません。大雑把に言えば,①遺産評価(非課税財産分は加えない)をして負債の控除を行い,基礎控除分を引く②法定相続分で相続人が相続したとして各自の取得額を計算し,そこに税率をかけて個別の相続税額を計算する。そのうえで合計して全体の相続剤額を計算する③各相続人の実際の取得分に応じて実際の各自の納税額を計算する,というものです。③の場面では税額加算や税額軽減・税額控除などの措置を行うことになります。配偶者の税額軽減が使える場合には,法定相続分通りの取得であれば納税額が出ることはありません。ただし,遺産分割協議が申告期限までに終わらない場合にはいったん納付するとともに,3年以内に遺産分割協議が終わる見込みとの届け出を行う必要があります。この話も別のコラムで詳しく触れます。

 

 話を元に戻すと,ここでの遺産は相続税法で定められている内容であって民法上のものとは異なります。生命保険金や死亡退職金・相続開始前3年以内の生前贈与などは遺産に含まれます。そのため,相続放棄をした方でも対象となる生前贈与を得ていた・生命保険金の受取人になっていた場合には相続税を課税されることは十分にありえることになります。当然,課税される場合には相続税の申告期限までにその申告等をしておく必要があります。生命保険金は非課税財産部分がありますが,こちらは相続人であることが前提となります。そして,ここでの相続人には相続放棄をした方は含まれません。原則に立ち返り,相続人では最初からなかったという扱いを受けるためです。

 以上のことから,亡くなった方に相当程度の財産がある場合にはいかに相続放棄をした場合であっても,相続税の納税をする可能性がある点を頭に置いておいた方がいいでしょう。詳細は相続放棄をする場面で確認をしておくのが安全なように思われます。

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