法律のいろは

代償分割により遺産分割をする場合の税金や合意上の注意点

2021年2月4日 更新 

 例えば,親と同居していた方が,親の相続について家の取得を希望し他の兄弟姉妹には相続分に対応するお金を支払うという方法が代償分割です。遺産の中にある不動産などを相続人の一部が取得し,他の相続人には代償となるお金を支払うことになります。詳細は他のコラムでも触れていますが,支払い能力を不動産などを取得する方が有していて公平の観点から問題がない等の事情が必要です。特に相続人間で話し合いがつかず裁判所の判断の中で代償分割(債務を負担させる方法による分割)に至るためには特別な事情が要求されています。その中には,先ほど述べた話や現物で分けることが不可能であるなどの話や利用状況から見てその方法が適当といえることなどが一般に挙げられています。

 

 ここで代償金として支払うお金はあくまでも遺産分割によって相続開始時に取得したお金という扱いがなされます。そのため,支払う側にとっては将来取得した財産を売却した際の取得費(買い散り代金)としては扱うことはできません。また,支払うことになる部分は取得しないために相続税の課税ベース上ではマイナスをされます。ここでの注意点は「支払った」ではなくてもマイナスとなることです。逆にもらう側にとっては相続によって取得している以上はプラスされます。税務通達上は,相続税の評価額(不動産であれば都心部であれば路線価・郊外であれば固定資産税評価額に倍率評価をしたものを修正計算)と時価が異なる場合には,支払額×相続税評価額÷時価という計算でプラス・マイナス考慮する金額を計算することになります。

 税務申告をする際には,代償金の金額がその対象物の時価をもとに定められていることや対象物が何であるかの特定が必要(税務申告で先ほど述べた方式を使うことの合意を相続人間で行えない場合,つまり同意しない方がいる場合)なので,こうした内容を遺産分割協議書に入れておくこともあります。

 

 ちなみに,ここでの評価の方法はあくまでも代償金の場合であるので,代償となるのが別の財産である場合には話が変わります。この場合には含み益が実現する(取得費よりも代償となる金額が大きい場合)には所得税の課税の話も出てきます。取得費については遺産分割に関する弁護士費用は含まれない扱いとなっています。

 

 遺産分割協議の際にはこうしたのちの税務面を意識した項目の他に,支払いの履行がないと支払いを受ける側は困りますので,支払いとともに登記手続きをするなどの条項を入れておくことが多いように思われます。

 

 課税に関しては,換価分割は売却について全ての相続人に所得税の納税の問題が生じるのに対し,代償分割では代償金支払いのために取得した財産を売却したケースでその取得した方に所得税の問題が出てきます。そのため,遺産の中にある財産を特定の相続人の名義としたうえで財産をのちに売却してお金を他の相続人に支払った場合には,どちらの形態なのかが問題になることもありえます。遺産分割での配分方法ではどちらも同じ形ではありますが,形態としてはどちらともいいうるために課税面で問題が出てくるというものです。

 こうした点が問題になった裁判例には,遺産分割協議書の記載(代償金という記載)があっても実態の経過から換価分割と判断したものもあります。結局対象となる不動産などの売却を想定している場合には,実態とそれを踏まえて税負担が生じる可能性がある点を踏まえて話をつけておく必要があるでしょう。もちろん,合意にもどちらの趣旨化を明確にしておくことも重要です。

 また,売却をする場合には特例の内容(例えば,有名な小規模宅地の特例は相続税の申告時までは所有していることが前提)を意識する(先ほどの特例では相続税の申告時までに売却をしない)必要もあります。

 

 

 

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