法律のいろは

相続税が課税されるケースで遺産分割協議が難航する際の注意点

2021年2月10日 更新 

 相続財産が多く相続税を課税されるけれども,遺言の有効性や有効としても解釈が問題になる・ある財産が遺産に含まれるのかどうか争われる・遺言がなく遺産分割自体に対立が大きい場合には解決には時間がかかります。こうした紛争の解決自体には確たる期限はありませんが,相続税の申告については相続開始を知ってから10か月以内の申告が必要となります。

 

 遺産分割に関する争いがある場合には,とりあえず法定相続分で取得したとの前提で課税額の計算を行います。相続税自体の計算は大雑把に言えば相続税の課税対象財産や非課税部分・負債控除としての差し引き後に,基礎控除分を差し引き法定相続分で遺産を取得したものとして課税額全体の計算をします。そのうえで,実際の取得分に応じた課税額の計算を行い,税額軽減措置や加算措置があればその後考慮して実際の各自の課税額を計算します。

 遺産分割協議未了分については,とりあえず先ほどの法定相続分での取得により計算を行うことになります。紛争性が高い場合には短期で話し合いがつかない場合があり,例えば申告までの期間制限内に小規模宅地の特例等著名な評価額減の措置を使うのであればその対象不動産をどれにするか(要件を満たすもののみ)について相続人全員の同意が必要・配偶者の税額軽減の適用を受けるためにも遺産分割が成立している必要があります。

 

 問題はとても話がつきそうにない場合には,3年以内に遺産分割協議が成立しそうという届け出を相続税の申告時(申告自体は制度上は各自が行うこともできるし,全員一緒にすることもできるとされています)に行う必要があります。記載の具体的な話は依頼している税理士の方が成立しない理由や見通しを記載することになるでしょう。

 それではこの3年以内に遺産分割協議が決着しない場合にはどうなるのかですが,法令によると,定められている遺産分割が間に合わない「やむを得ない」事由があることについて,税務署長の承認を得ておくことが必要とされています。この場合にはその事由がなくなってから4か月以内に遺産分割協議がなされれば,税額軽減などを受けることができます。ここでの「やむを得ない事情」には単に遺産分割協議を続けていたとい話は該当せず,相続をめぐる裁判や審判などの裁判所での手続きがなされている・遺産分割の禁止がなされている場合(遺言や相続人による合意によって上限5年以内の期間内で制限をすることができます。この場合にはこの期間内は遺産分割ができません)など・その他やむを得ないと認められる場合であるとされています。

 単に感情面その他で話がつかない場合には,遺産分割が解決してもいったん納税したお金について更正の請求(ここでの話に沿って言うと,減額適用などによって納付しすぎたお金の返還を求める手続き)をとることができなくなります。このように,紛争が生じている場合には紛争対応とともに税務面のリスクについても注意をしておく必要があります。今回触れた以外にも各種特例などにもかかわる話となります。

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