法律のいろは

死亡退職金は相続財産に入る?相続税の対象とならない場合とは?

2021年3月2日 更新 

 死亡退職金の定めや実態には実際には様々なものが考えられますが,多くの文献では遺産には含まれないが相続剤の対象になるとされています。実際に,死亡退職金の多くは亡くなった方の相続人に対して,生前の功労に報いる側面や遺族の生活保障のために定められたものであって,支給されることや支給の基準程度は定まっているものが多いかと思われます。

 遺族固有の財産として遺産には含まれないものの,誰にどの程度配分をするのか(相続人に対し手とは限りませんが)を遺言で決めておくということもありえます。ここで帰属を決めておくことで,亡くなった方の意向により配分を決めるとされている場合には,配分が定まることになるでしょう。

 

 別のコラムでも触れましたが,法律上亡くなってから3年以内に支給が確定するこうした死亡退職金は,相続税の課税対象とされています。法令上あるいは裁判例上は確定給付年金の一時金・年金や公務員の死亡退職手当の受給権などが該当するとされています。会社役員の死亡退職金も同様の性質のものがあります、生前に退職をした場合の退職金(死亡後に支給の有無や金額が確定したもの)についても,支給が予定されていたものであれば,同様に考える話になりますので,同じく相続税の対象になるものと考えられます。これは判例上は退職金支給規定などによって退職金の支給自体は確定あるいは予定されていた場合の話になります。

 これに対して,死亡によっても退職金が支給されることが予定されていない場合には,同様には考えられないことになります。そもそも,死亡退職金自体は,亡くなった方の退職所得と呼ばれる所得に法律上該当し,本来は所得税も課税されるとともに,相続税法で相続によって取得したものと扱われることで相続税の課税をされるという性質のものになります。実際には所得税部分は非課税とされているので,相続税しか課税はされません。この話は死亡により退職金が支給される確定があった場合には当てはまることになります。

 相続税法上死亡後3年以内に確定した死亡退職金を対象とするという点は,実際上は相続により生じた財産と同視すべき事情がある場合に公平の観点から,相続税の対象とする期間を定めた規定とされています。実際に最高裁の判断では役員の退職手当金の支給が死亡後4年経過して決められたケース(戦後まもなくの時期のもので特殊な事情から役員への退職手当金の支給等が制限などされていたという事情があります)について,死亡退職金の支給が予定されていなかったことから,相続税の対象にはならないと判断したものがあります。この場合には遺族に一時所得という区分の所得があったものとして所得税の課税が問題となります。

 

 ところで,ご本人が亡くなった場合に支給が予定されていない場合には支給が死亡後3年以上経過して確定することがありえます。この場合には先ほどの判例の趣旨からすると,相続税の課税対象にはなりませんが,一般には死亡退職金を支給するのが通常と考えられている(先ほどの判例でも触れている点)からすると,支給が予定されていない事情はある程度説明が必要になる場合がありえます。あくまでも,相続税の対象とならない場合は例外であるという理解があるものと思われます。いずれにしても,死亡後退職金の支給確定が3年を経過すると法律上は相続税の対象にはならないことになりますが,実態との乖離がある場合には問題が起こることもありうるでしょう。

 

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