法律のいろは

行方不明・生死不明の方がいる場合に,その方に対する財産関係の対応の方法はあるのでしょうか?

2021年5月16日 更新 

 長く所在が不明の方の土地を譲り受けたということで長く管理している,けれども譲受の証拠などがないというケースはありえます。ことに,その方が行方不明になってから相当長い期間が経過している場合には,譲受の関係がよくわからないことがあります。こうした場合に,土地の所有権を整理するためには時効により取得したということで名義の移転を求めることになります。ただ,相手がいない形になりますので,財産管理人を選任してもらう必要があります。

 不在者の財産管理人という制度ですが,利害関係のある方などは家庭裁判所にその専任の申し立てをすることができます。管理人の報酬等のお金を申し立て時に収める必要がありますが,土地の名義関係を処理するには申し立てをするのも一つの方法です。不在になった方が自らの親や配偶者のいない兄弟姉妹の場合には,相続による取得もありえます。この場合には,後で述べる失踪宣告の申し立てをすることもありえます。

 

 不在者財産管理人を選任してもらった場合には,この方を相手に自らが時効で所有権を取得したということで土地の名義を移してほしいという請求を立てる必要があります。財産管理人には財産管理義務があるので話し合いに応じることはないと思われますから,通常は裁判で移転を求めることになります。この場合には,時効の言い分に最低限必要なある時期とそこから10年を経過した時期に,その土地を管理していたことを示す必要があります。時効の主張をするのに必要な期間は10年あるいは20年ですが,財産管理人のケースでは争う範囲は通常事実関係は分からないということなので,10年ということが多いと思われます。過去の利用関係をきちんと示す必要があります。登記名義以外に固定資産税の負担をしていた・利用関係は長く同じであったことを示す資料を出す必要があります。

 裁判で勝訴判決を得て登記名義の移転を行うことになります。この場合に不在者の財産管理人の選任の申し立てや裁判はご自身でも行うことは可能ですが,専門家に任せるという方法もありえます。

 

 ご自身が相続人にあたる方が行方不明が長く続いている場合には,失踪宣告の申し立てを家庭裁判所に対して行うことも可能です。失踪宣告自体はこのほかの場合でも申し立てを行うことは考えられます。失踪宣告とは一定の期間生死不明(行方不明)になっている方について,家庭裁判所への申し立てを行い,家庭裁判所が生死不明などの要件を満たしていると判断されれば死亡が認められるという制度です。言い換えると,死亡が認められることで相続が始まることになります。

 失踪宣告には,大きな事故などに巻き込まれた方についてその後1年間生死不明の場合・単に生死不明が7年続いている場合の二つの場合があります。前者は事故の際に亡くなった・後者は生死不明となり7年後に亡くなったとして死亡が認められることになります。死亡が認められるには,生死不明(行方不明)の原因と期間を満たしていることや利害関係人からの家庭裁判所への申し立て・家庭裁判所が行う生死の情報を届け出るようにという手続きを経ても,生死不明であることが必要です。

 申し立てを行うには,ご自身が申し立てを行うだけの利害関係を有しているかのチェックだけでなく,生死不明といえる状況なのかどうか(申し立て時に調べても生死不明であることを明らかにする必要があります)をよく調査しておく必要があります。失踪宣告自体は亡くなったものと扱い相続などが生じるようにする制度なので,失踪宣告までに財産管理が必要であれば先ほどの不在者財産管理人が必要なこともありえます。

 また,実はその方が生きていた場合には失踪宣告を取り消すことも可能です。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。