法律のいろは

成年後見制度が必要な場合とその限界点とは?

2021年5月23日 更新 

 高齢になった方だけでなく,障がいを持った方(特に知的障がいや精神障がい)の財産管理や身の回りの世話をする契約などを行うための方法の一つとして成年後見制度が存在します。既に公の機関その他で周知をされている制度ですが,実際上は利用件数が伸び悩んでいるようです。

 

    建前として,任意後見契約を締結している・その他財産管理に関する契約の締結がない限り,御本人以外の方が親族であってもその方の財産管理をすることはできません。病院や介護に関する契約を代わりにすることはできませんし,その他何かを購入する・借りるということもできません。ご本人が体調・認知面でしっかりしている場合には,何かしらご本人の財産管理面その他で問題のある契約やお金の管理がなされることは考えにくいのですが,特に認知面で問題が生じている場合には話が異なります。

 財産管理の面での備えがない場合に,成年後見制度(法律で用意されている財産管理や身の回りの管理、世話を他の方が行う制度)を活用する必要性が出てきます。ご親族が実際上代わりに管理をしているケースはよくありますが,親族間で対立が大きなケース・ご本人のお金の管理をうまく抑制できない場合には,対応に限界が出てきます。

 

 成年後見制度は,そうした場合代わりに管理や契約をする権限・ご本人が締結した契約の取消しを行うことができる等対応する可能性を与えるものです。ただし,御本人の認知能力などから一定の判断ができるのではないかという場合には,契約の取消しや代わりに契約をする権限まで与えられるわけではありません。したがって,要介護度やその基礎資料における自立支援度・認知機能などを踏まえて見通しを立てる必要があります。高齢の方ではここが特に問題になる可能性があります。

 

 次に,仮に財産管理や契約を代わりに行う等ができるにしても,日常生活に使うお金や買い物については,成年後見開始の判断を家庭裁判所からなされていても,ご本人ですることは可能です。そのため,精神障がいその他の原因によりいわゆる浪費が大きいためにお金の管理ができないケースでは,お金の管理がある程度可能ではあります。ただし,日常のお金を使う名目でよくわからない使途にお金を使っているために抑制したいという場合は限界もありえます。

 

 成年後見制度を使うときにまず,重要となるのは,ご本人の認知能力面の問題の内容やそのための検査結果その他がどのような内容・状況かという話しになります。既存の主治医がいればその診断書(ただし,診療科目面で専門ではない場合には専門の医師の診断を受けた方がいいでしょう)が必要です。原則として医師の鑑定を受けることとされていますので,当然ながら疑問が出てくるようなことがあれば鑑定となりその分費用がかかります。

 申立ての場面でいえば,成年後見人の候補者となる方(多くは親族ですが,専門職を候補者とする場合もあります)について,親族(子供や親等)の同意が得られるかどうか,トラブルがあるのかどうか・障がい特性その他の問題があるのかどうかで,どなたが後見人となるのかが変わってきます。親族の対立が大きい場合や法律上あるいは障がいその他の面での問題があるときには,弁護士や司法書士・社会福祉士の方がそれぞれ後見人となる可能性が大きくなります。財産額が大きい場合も同様で,親族が後見人になるにしてもさらに後見監督人という専門職の方がつけられる可能性があります。申立の際には後見人候補者を記載する欄がありますが,あくまでもどなたを後見人にするかは裁判所が最終的に決めることになります。

 同じように,裁判所の監督などは成年後見制度を使う場合には様々な場面で及ぶことになります。例えば,毎年の報告が必要になりますし,後見人の報酬は裁判所が判断をして決めることになります。ご本人が居住している不動産の売却が必要になっても,必要となる事情その他を判断したうえでの裁判所の許可が必要となります。財産管理もあくまでも保守的に管理をするだけで投資や運用という視点はありません。

 

 したがって,資産の運用管理をすることを考える場合や途中での財産売却が必要であるならば,成年後見制度を利用する以前に,あらかじめ任意後見契約や信託契約の活用を考える必要があります。介護や福祉サービスの契約など身上監護に関する事項は任意後見あるいは成年後見制度を活用しないとできませんので,事前の契約の場合には任意後見制度の利用を考えることになるでしょう。

 以上の自由度の低さ,その反面としての監督機能の充実の面もあってか成年後見制度はそこまで広く活用されていない面があるようです。とはいえ,事前に何かしらの契約などの準備をしていない場合で,ご本人の浪費や消費者被害の可能性・お金の管理をめぐっての親族の対立が大きい,その他福祉や介護のサービスの利用で契約をきちんとする必要がある場合には,成年後見制度は必要な制度となります。

 活用が必要なのかどうか・見通しがどうなのかなどは事前に専門家や専門機関と相談のうえで,どのような方法を取るか考える必要があります。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。