法律のいろは

民事信託を使った財産管理(その②,障がいを持つ子供のための活用)

2021年5月25日 更新 

    障がいを持った子供がいる場合に,親としては自らの死後その他できちんと財産管理や身上監護などの身の回りの世話がきちんとされるのか, 大いに気になるところです。浪費や悪徳消費者被害に遭うのではないか等気になるところがありえます。こうした場合の対応策としては,法律上の成年後見制度の活用や任意後見制度・信託その他の財産管理契約の活用が考えられます。

 

 このうち,成年後見制度は裁判所がきちんと監督機能を果たす意味で安心ではあります。ただ,ご自身の財産を活用して子供の費用その他に役立ててほしいという場合には活用できませんし,ご自身が成年後見制度を利用しないといけない場合には,扶養義務を超えて子供に援助などができないという限界があります。

 任意後見制度は,身上監護を行う権限を持つうえに財産管理などに関わる方を指定できるという点でメリットはあります。ただし,子供本人が契約をした際の取り消しを行うこと自体ができないので,仮に何かしらの消費者被害に遭う場合の被害を止め切ることができない点に限界があります。また,ご自身の財産を活用したいという場合には,あくまでも子供についての任意後見人ですし,ご自身に任意後見人をつける場合にも当然に活用できないという意味では限界があります。

 

 民事信託等の財産管理契約では,財産管理を行うにすぎず,例えば施設や福祉サービスの契約を代わりに行う権限がないので,この意味では限界があります。そのため,任意後見契約との併用を考える等の対応は必要です。他方で,民事信託については,子供の財産管理だけでなく,ご自身の財産を子供のために活用してもらうことも可能ですので,ご自身が高齢化したなどの場合には活用するメリットが大きくなる可能性があります。先ほどの契約締結に関しては,財産を信託により管理者に移転することで保護を図ることも可能です。

 ただし,民事信託について,ここで述べた話のように特にお金を払うことなく財産管理の利益を得る場合には,利益を受ける側に贈与税や相続税等の税金の負担が生じる可能性があります。言い換えると,信託を設定する財産について,信託契約締結時に課税の問題が出てくるため,その支払いができるのかという問題が出てきます。そのため,仮に信託契約を締結する場合には誰を受益者(財産管理による利益を受ける方)にするのかが重要になります。ちなみに,一定の障がいがある場合には「特定障害者」ということで税金上優遇措置(税金がかからない部分が出てくる)というケースもありえます。

 

 一つの対応方法として,信託契約設定時にはご自身が財産管理の利益を受ける(この場合には課税の問題は出ません)ことにして,ご自身がなくなる時点での利益を受ける方(受益者)を障がいを持った子供に指定しておく(当初の信託契約で設定可能です)ということもできます。この方法が全てではありませんが,あくまで一つの方法です。具体的な利益の与え方については,個別の契約での決め方によりますが,例えば,毎月決まった金額を渡す・必要な際にはそのお金を渡すという決め方もありえます。子供が自分の意思を示すことができない場合には,きちんとした方にその意思を示してもらうという方法が考えられます。制度上,「受益者代理人」という利益を受ける方の利益を擁護する方を指定することも可能です。利益擁護をきちんと行うことができる方ということでは弁護士が選任することになろうかとは思われます。

 仮にその子供がなくなる時点で財産が残っている場合に誰に引き継がせるかも指定できます。ここを指定するかどうか・指定する場合に誰にするのかは信託契約を設定する側の意向次第ではあります。いずれにしても,財産管理のスキームと身上監護のスキームを組み合わせることにより,求めるものへ近づくことは可能です。

 ただし,特に民事信託については裁判所の監督機能は基本的には存在せず,信託監督人を選んでおき,きちんと監督ができるようにしておく必要があります。この監督機能をどうするのかという点では注意が必要でしょう。

 

 

 

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