法律のいろは

日本人が海外に持っている財産に関する遺言をする場合に,どこの法律が適用されかつ注意点があるのでしょうか?

2021年5月31日 更新 

 現在海外に移住する方や外国籍の方が長く日本で在住するケースが増えてきたように思われます。また,投資などにより日本に住んでいる日本人であっても海外に財産を持っている場合があります。仮に相続になった場合・遺言をする場合にどこの国の法律が適用されるのかは,話し合いや税金面・その後の手続き等様々な問題が関わってきますし,複雑な話になりかねません。

 このうち,今回は日本人が日本で遺言をするけれども,海外に財産を持っている場合,遺言はないけれども海外に財産がある場合を触れておきます。

 

 こうした相続に関しては,遺産分割や遺言に関しては法律で一定のルールが存在します。それによると,遺言がない場合には亡くなった方の本国法(国政がある国の法律)で相続関係や内容が決まるとされています。そのため,基本的には日本の法律に従った遺産分割や相続に関する対応をすることができます。ただし,海外に不動産を持っている場合には注意が必要です。相続に関する法律には,日本のように不動産や預金その他を含めて一切の相続に関する法律的な事柄を統一して対応する国と,不動産とそれ以外を分けて区立する国などに分かれます。

 例えば,いわゆる英米法系の国では不動産とそれ以外では異なった対応をする(不動産は,不動産がある国・動産は亡くなった方の国籍地の法律)ところがあります。この場合に,その国では他の対応をする国の法律にもづく処理が採用されない可能性があります。言い換えると,日本での遺言や遺産分割の結果(日本の法律に沿った内容になります)がそのまま受け入れられない可能性がある点に注意が必要です。そのため,海外にある不動産に関する遺産分割についてはその国の法律に従った処理や遺言についてもその国の方式に従った対応をしておいた方が安全な場合がありえます。この場合には,日本にいるその不動産のある国の弁護士資格を持つ弁護士あるいはその国にいるその国の援護し資格を持つ弁護士などに依頼して対応をする必要が出てきます。

 注意点は,こうした対応上の注意が出てくるのは全ての国においてではないということです。

 

 ちなみに,海外に居住する日本人(日本国籍を持つ方,日本の法律上居住先の国の国籍を取得した場合には,日本国籍を失うことになります)が遺言をする場合には,自ら記載をする遺言を日本の方式にしたがって残すことができます。また,領事館に行けば,領事は公証人の業務を行うことができるので,日本の方式に沿った公正証書遺言などを残すことも可能です。ちなみに,この場合には,その居住している国の方式・海外に不動産を持っている場合には,そこについてはその国の方式に沿った等の遺言書を残すことも可能です。

 

 相続税やその補完をする贈与税に関しては,これらの法律で日本での納税の義務範囲が定められています。こちらは贈与を受けた・相続をした方の属性によって納税範囲が変わってきます。また,数年前の法改正により非居住者に関する納税義務が厳格化されています。今回のテーマである日本国籍を持つ方について簡単に言えば,日本国籍を持つ相続をする方がずっと日本に住んでいれば海外にあろうが・日本国内であろうが全て相続税(贈与税)の課税対象になります。相続開始時に日本に居住をしていない場合であっても,一定の場合には海外に所在する亡くなった方の財産(相続する財産)について税金を納める義務が生じます。

 制限的な課税を受ける方については,日本国外に所在する財産は課税の対象からは外れます。課税範囲がどこまで及ぶかは分かりにくい点がありますので,気になる場合には税務専門家に相談をしておいた方がいいでしょう。

 

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