法律のいろは

法律上の特例が適用される場面なのかの注意点(小規模宅地の特例等①)

2021年6月6日 更新 

 相続税がかかる可能性がある場合には,その財産評価のみならず評価の軽減を受ける特例の適用を受けることができるかが問題になってきます。一定の建物などの敷地となっている土地については,法律で定める要件を満たせば,財産評価の軽減を受けることができます。小規模宅地等の特例と呼ばれるもので,法律でその対象や要件・軽減対象となる面積の定めが設けられています。

 この話のうち,限度面積の話はここでは触れませんが,適用の対象や要件の面での注意点についてここでは触れておきます。これは,相続開始の直前の時期(相続の対象となる被相続人が亡くなる直前)に,被相続人・被相続人と「生計を一にしていた」親族が事業や居住のための「一定の構築物や建物の敷地のために使われている」宅地等がある場合に,その宅地等について限度面積の範囲内で財産評価を減額することができる制度です。限度面積や減額割合は4つあるタイプに応じて異なっています。このタイプはそれぞれ前提用件が存在します。

 

  この制度は,小さな事業主の円滑な事業基盤の引継ぎや生活基盤の維持に不可欠なものであって,処分するにも大きな制約を受けることが通常であると考えられるために,税金の負担能力が小さくなるだろうということで軽減措置が設けられているものです。この制度の対象となる居住用の宅地等については,被相続人の居住用であった宅地等については,配偶者の相続であれば特に要件はないですが,一緒にそこで生活していた親族については相続税の申告をする時点までは少なくとも継続してそこで生活し宅地等を所有していることが要件となります。その宅地等で生活をしていない親族については,配偶者や同居の親族がいないこと等要件が付け加わっています。生活基盤であるために処分しにくいという点が考慮されていることや課税逃れを防ぐための規制も設けられています。被相続人と「生計を一にする」親族の居住用の宅地等についても適用対象となっています。

 ここでいう居住用の宅地等は,特に主たるものでないと駄目であると限定がないことから(限定する旨の規制がある場合も経津の場面ではあります),複数の居住用の宅地等の存在を肯定する裁判所の判断も存在します。ちなみに,居住用の宅地等にあたるかどうかは,その方が老人ホームなどに移ることになった場面では問題になりえますが,現在は法令によりこうした場面も含まれるとされています。

 

 次に事業用の宅地等には,被相続人や「生計を一にする」親族の駐車場事業やその他不動産貸付事業等のために用いられていた場合・その他の事業で用いられていた場合もあります。このほかは,被相続人が多くの株式を保有する会社の事業用の宅地等の場合もあります。これらはそれぞれ別のタイプとして,適用の要件が異なっています。

 このうち,「生計を一にする」場合が何であるのかは法令ではっきりと記載はありませんが,いわゆる財布が共通(日常生活をするための収入やお金を共通にしていた)という場合であると判断した裁判例があります。親子間では,家族での事業の場合には親の事業を子が引き継ぎそこから生活費を親子とも負担するという場合があります。これと異なり,親子の間であっても親の成年後見人などに子供がなっている場合には,親と子供の財産管理は別である上に,いくら親子といっても親の収入を子供のために使う・子の収入によって親が生活をするとは当然には言えなくなります。むしろ,前者については利益が反することになるので出来ないのが原則です。あくまでも扶養義務を果たしてもらう必要がある場合に,養ってもらうという意味での同じお金から生活費を賄っているという場面が出てきます。

 こうした成年後見制度などの活用や財布が共通であるとは言い難い場面では,「生計を一にする」とはいいがたい点には注意が必要です。

 

 このほか,「一定の構築物や建物の敷地のために使われている」という要件も,例えば駐車場事業のために使っている場合には,該当しない場合もありうる点には注意が必要です。あくまでも事業などのために用いている場面での事業引継ぎを図るためという目的もありますが,処分しにくいからという面もあるので,処分しにくいとは言いにくい場面では該当しないことになります。言い換えると,簡単に撤去可能な程度な舗装あるいはそもそも全く舗装もない・何かしら管理用の建物などもない場合には,この要件を満たしていない⇒評価減とならない可能性が高くなりかねません。裁判例の中には,事業のために使われていることが認識出る程度にお金や労力をかけた,ある程度堅固な施設であって,この施設を使って事業をしている性質の施設が存在することを意味すると述べるものがあります。

 

 遺産分割が完了している・対象が複数ある場合にその宅地等を対象にするかの合意ができている等の要件もありますが,今述べた点も要求されている等注意が必要です。

 

 

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