法律のいろは

遺言執行者を決めておいたのに,相続人が遺産分割を行うことはあるのでしょうか?

2021年6月23日 更新 

 遺言書を作成し遺言執行者を決めておいても,遺言書の有無をだれも分からないということであれば意味はありませんし,そもそもそれであれば遺言がないことを前提に遺産分割協議がなされる可能性が高くなります。これに対し,遺言書の存在を相続人が知っていてもできるのかどうかは,法律で定められた遺言執行者がいる場合に遺産分割協議を行うことができるのかという権限などの話になってきます。

 

 まず理屈から言えば,遺言執行者がいる場合に,相続人が勝手に遺産を処分することなどはできませんから,遺産分割協議は本来できないということになりそうです。相続に関する法改正により,相続人が何かを行う権限がなくなることは明確化されました。とはいえ,遺言書がなければ,実際にそういう場合なのかは分かりません。トラブルをなくすためには,遺言を残す側は遺言をきちんと保管するだけでなく見つけやすいようにしておく・相続人の側は遺言の有無をを調べる必要が出てきます。存在が確認できない場合には,結局のところ遺言がないという前提で遺産分割協議を進めていくことがおかしいとは言えませんので,そのまま話が進む可能性が出てきます。

 このうち,公正証書遺言については相当古い時期に作成したものを除けば,検索システムが存在します。内容の確認などは作成した公証人役場に行うことになるでしょう。自筆証書遺言については,法務局での保管サービスが始まりました。このサービスを利用するかどうかはその人次第ですので,仮に利用しない場合には自宅などで見つけてもらえそうな場所に保管しておく必要があります。保管サービスを利用した場合には,自筆証書の遺言書の原本自体が保管されることになります。こちらの場合には,相続人になっる方には,法務局から保管に関する事項などが通知されますし,相続人の側からも閲覧や一定の情報の交付請求を求めることができます。

 そのため,相続人となる方が相続開始後に,自筆証書遺言が保管されているのかどうかなどの調査をしやすくなりました。自筆証書遺言を作成する≠遺言書保管サービスを利用するということではないので,保管サービスを利用していなくても自宅に何かしら保管されている可能性自体は存在します。わかりやすく自宅に保管する場合には,その遺言書の内容を知っていてその存在を疎ましく思っている方が移動させる可能性等もありますので,そうした点も踏まえてどういった方法がいいかをよく考えておく必要があります。

 

 公正証書遺言が作成されている等遺言書の作成を相続人が知っている場合であっても,相続人や遺言で財産を得た方などが全てが同意し遺言執行者も特に反対しない場合には,遺産分割協議を行うこと自体はできます。この場合には,先ほどの法令上の問題点も意識して有効性に疑義が出ない形なのかを注意する必要があります。反対の方がいる場合に遺言によっては遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)を行うのかも考えておく必要が出てくるでしょう。期間制限が存在するためです。また,税務面でどういう点が問題になりうるかも相続税が問題になりそうなケースでは事前に税理士の方に確認をしておいた方がいいでしょう。こちらの問題については別のコラムで詳しく触れていますので,そちらもご一読ください。

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