法律のいろは

遺産分割の際に不動産を相続人の間で共有にする形で話をつけた後の注意点

2021年7月1日 更新 

 遺産分割の場合に,主に3つの方法があり,特に代償分割(特定の方が不動産を取得しその代償金を他の方に支払う形)での注意点は以前触れました。相続税の負担(連帯納付義務の問題を含む)や代償金が支払われる目途がないとこの方法は取れないのが原則である点等の注意点があります。このほかに,不動産を遺産分割で共有にする場合(その他の方法による取得もそうですが),いわゆる小規模宅地等の特例の活用をお考えの場合には,取得する方(適用を受けられることができる方かどうか)によって税金の負担が変わる可能性があります。

 

 こうした話以外に仮に不動産を共有の形で分割する際には,後のことを考えて注意をする必要があります。一番のポイントは,その後の利用や処分について他の共有となった方に実際上の拒否権ができてしまいかねないという点です。法律上,共有となっている場合には,新たに賃貸その他不動産の活用をする場合には過半数の持ち分を持つ方の同意あるいは全員の同意が必要になりかねないという点です。ことに,売却や新しく土地上にアパートを建てるような場合には全員の同意が必要になってきますので,土地活用や処分に関して,他の共有者に実際上拒否権を与えかねないという点には注意が必要です。

 この不動産がアパートである場合には,家賃は持ち分に応じてわけることになるでしょうし,通常の修繕はどなたかが行い費用請求をすれば足りる形にはなります。大きな修繕ということになると,その内容によっては単なるアパートの保全とは言えない場合も出てきます。こうした場合には,上で述べた他の共有をしている方の意向がどうかが問題になってきます。

 

 こうした制限があるので,その不動産の活用で考え方が大きく異なる場合やそもそも現在行っている遺産分割協議で話し合いがつかなさそうな場合には,うまく活用ができない等の可能性があることは頭に入れておいた方がいいでしょう。遺産分割が終わった後も共有物分割手続きにより,その不動産の共有状態を解消することは可能です。この場合は現物で分割する(仮に土地で同じ持ち分で共有者が3人であれば,物理的に3つに分ける等)のが原則ですが,分割した際の立地などの問題などからうまく行うことができない場合もありえます。分割方法で結局もめるのであれば,ここでも売却を行うのかどうか等,遺産分割の際に問題となるのと似たような問題が出てくる可能性があります。

 もちろん,他の遺産もありいつまでも遺産分割協議でもめていても仕方がないというお考えが共有されている場合には,とりあえず共有にしておくというのも一つの手でしょう。売却については話がまとまらずかといって代償金が準備できない場合に,話がつけばとりあえず共有としておき,将来代償分割で清算をするというのも方法の一つです。いずれにしても,かかるだろう税金面も想定しながら対応をする必要があります。この場合には一度共有の形で遺産分割協議を終わらせて後日再度共有物分割協議を行うことになるでしょう。注意点は遺産分割協議とは異なり,共有物分割では話し合いがつかないと地方裁判所での手続きとなること・共有物分割訴訟は裁判所が大きな裁量を持つ裁判手続きであり,分割方法の相当性を基礎づける必要がありますし,最終的には何かしらの分割がなされるのが通常であるという点です。そのため,共有関係を求める形で解消できるのかどうかの準備と見通しを立てておく必要が出てきます。

 今まで述べた問題なども理解したうえで,遺産分割協議を不動産共有のままで終わらせるのがいいのかどうかを考えておく必要があります。

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