法律のいろは

遺産分割協議で,遺産の管理費用はどう扱われるのでしょうか?

2021年7月9日 更新 

 遺言が存在しない場合,遺産分割協議をするまでは相続人の間で遺産を共有する形になります。例えば,相続人のうち誰かが絵を管理している場合には,そこを使うことができるという点がある一方で修理その他の費用がかかる可能性があります。家庭裁判所に財産管理人の選任を要求する場合(できる場合は,法律で定められています)には管理人の報酬などの費用がかかることになります。

 これとは別に相続人の間で争いがない場合には,不動産など遺産に含まれる財産を人に貸して収益を売ることも可能です。この場合の収益は各相続人が相続分に応じて各自取得することになります(遺産分割で異なる取得を行う競技自体は可能です)。先ほど触れました管理をしつつ一方で利用をしているケース(例えば,遺産に含まれる家に無償で住んでいる場合)には,それによって得た利益の清算(他の相続人の使用収益をする権利を侵害している部分の清算)はありえます。ただし,相続に関する法改正によって設けられた配偶者居住権(令和2年4月以降の相続について適用)の場合には話が異なります。短期配偶者居住権であれば遺産分割まで無償でその不動産を利用することができます。長期配偶者居住権であれば,遺産分割の内容として使用収益することができます。

 

 遺産の管理費用としては,先ほどの遺産に関する財産管理人の船員がある場合を除けば,不動産であれば固定資産税や修理代・保険料の支払い・その不動産が収益物件である場合の立ち退き料などのお金が該当します。これらの費用は清算を要することになりますが,遺産分割協議の手続きで行うことができるのかという問題があります。

 実際のケースでは費用や支出項目が争いにならない場合には,遺産分割協議の中で相続人全員で清算の合意を行うことが多いように思われます。問題は対立が大きいケース(費用が多すぎる・無駄な支出その他で争いがある場合)には,話し合いで解決をしない可能性が出てきます。この場合に遺産分協議の対象になるということであれば,家庭裁判所での調停や審判での解決となります。そうならないのであれば,別途地方裁判所あるいは簡易裁判所で負担したお金を請求する裁判を行う必要があります。見解が分かれているところではありますが,合意ができない場合には遺産と遺産管理費用は別個のものであるということから,民事裁判での解決に至る扱いになるとされています。

 ただし,この場合もご本人で話がつかない(仮に弁護士に依頼し交渉している場合には交渉でらちが明かない場合を含む)ケースでは,まずは家庭裁判所での調停を行うことになります。家庭裁判所での話し合いで解決を探るということになります。費用負担以外は全て話し合いあるいは遺言で解決をしている場合には,別途遺産管理費用のみで話し合いをすることになります。実際に請求をする場合には,単に自らが義務なくして管理していたものなのか・管理の義務はあるが他の相続人の相続分にあたる部分までの費用負担をする必要はないのかなど請求する法律上の根拠で,場合によっては請求が認められるお金の範囲が変わる可能性もありえます。どこまでの請求が認められそうなのか・他の遺産分割協議とともに話し合い解決の見通しがどの程度あるのかなどを事前に見通しをつけて対応を考える必要があると思われます。

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