法律のいろは

遺言で贈与する場合に,受け取る方が先に亡くなった場合の対応をどのようにしておけばいでしょうか?

2021年7月20日 更新 

 既に「相続させる」という記載をした遺言の話で触れましたが,遺言で贈与を行う(遺贈)の場合であっても,遺贈の効力が生じる時点=遺言をした方がなくなる時点で,遺贈を受け取る方が生存している必要があります。そのため,「〇〇をAさんに遺贈する」との遺言が存在する場合に,先にAさんが亡くなってしまうと,遺言の効力はなくなるのが原則で,Aさんの相続人が相続をするということではなくなります。

 遺言の記載の内容から,こうした場合の他の方への遺贈をする趣旨が読み取れれば,その内容での遺贈その他ということになります。曖昧になっている場合には,遺言書の記載の解釈をめぐってトラブルになる可能性があります。明確に「Aさんが先に亡くなった場合にはAさんの親族のBに遺贈する」等どのような意味内容かをはっきりさせておく必要があります。ここでは,Aさんが遺言の効力発生時(遺言をした方の死亡時)に生存をしていれば,Aさんが遺贈を受け,Aさんが先に亡くなっていればBさんが遺贈を受けることになります。

 

 こうした遺贈の話とは異なるのが,「後継ぎ遺贈」と呼ばれるものです。こちらは無効とする見解が支配的で可能にする方法として「受益者連続型信託」という方法が提唱されています。この方法については別途触れますが,ここでは「後継ぎ遺贈」と呼ばれるものと無効であると考えられている理由について触れておきます。

 後継ぎ遺贈とは,例えば,次のようなものです。遺言をする方の事業をまずAさんに引き継いでもらい,Aさんが亡くなったら次にBさんに引きついでもらうというものです。ここで贈与は事業で使っている財産その他を対象とするというものです。先ほどの話とは,第1次の遺贈と第2次の遺贈があるという点では同じですが,最初の遺贈で取得した財産の引継ぎ先が遺言で指定されているという点です。最初の遺贈はよく見かけるものでありますし,財産を処分することは遺言で可能ですから,ここが有効かどうかは問題にはなりません。問題となるのは,一度Aさんの財産となるだろう財産について,遺言でその帰属を決めることができるのかという話です。Aさんの財産の処分に介入できる形となりかねないという問題があります。

 無効であると考えられている理由は様々言われていますが,その一つには今述べた期限付きの所有権(法律では存在しない)を認めることになりかねないことが挙げられます。裁判例上では,第1次の遺贈に関する遺言の記載の意味の解釈や有効性の問題であると考えられており,第2次の遺贈が有効か無効かを述べてはいません。遺言の意味する内容が何であるのかという点が問題になると考えられています。

 

 有効性の問題を避ける方法の一つとして「受益者連続信託」という方法が挙げられます。ここでは簡単に触れますが,信託による財産管理の恩恵を受ける受益者が亡くなった際に,別の受益者がその恩恵(受益権)を受ける信託を設定することができます。この方法を用いれば,当初Aさん,Aさんの死亡後にBさんに一定の権利を与えることができます。信託法という法律で認められている方法ですが,永遠にこうした財産帰属を決めることはできず,設定から30年を超えた時点での受益者が死亡する時点で終了することになります。

 税務面その他で検討するところがありますが,詳しくは別のコラムで触れます。

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