法律のいろは

遺産分割で代償分割を行う際の代償金の金額の取り決めと課税上の注意点

2021年7月25日 更新 

  遺産分割の方法のうち,特定の相続人に財産を取得してもらい代償となるお金などを支払ってもらうという方法(代償分割)については既に他のコラムでも触れています。遺産分割の審判では支払う側に資力があるなどの事情がないと認められませんが,仮に話し合いでこの方法をとる場合には,支払う側の支払い能力に問題があると回収リスクとともに相続税の連帯納付の問題が生じることもありえます。

 

 そのほか,お金の支払いを確保するための取り決め内容の話も重要ですが。代償となるものをお金の支払い以外の権利の設定などを行いたい場合には,相手(支払う側)や他の相続人の同意が必要になります。お金の支払い以外で代償となるものが欲しい場合にはこの点に注意をする必要があります。遺産分割審判では代償金の支払いは遺産分割時を原則に,例外として後の時期の履行もありえます。履行(支払い)の時期はその実現可能性とともに重要な要素です。支払いとともに登記移転に応じる内容(不動産の場合)等の調整が重要になります。

 

 代償金の支払いを受ける場合には,遺産の金額などによって生じる相続税について注意をしておく必要があります。代償金を受ける側は,他の取得する遺産とともに代償金が取得対象として相続税の税額が決まってきます。ここでの取得金は,相続開始時の財産の金額を前提にすることもありますが,特に相続開始後に大きく金額が上回っている場合には遺産分割時点での時価によることもあります。この場合の対応は現在は通達で示されている部分はありますが,相続財産のそもそもの全体の金額を上回ることになりかねない(遺産総額の金額<相続税の課税金額)ので,その調整をどうするかが争いになったこともあります。

 この争い(国税不服審判所の裁決)では,先ほどの状態を不合理と考え,代償金の金額×対象財産の相続開始時の相続税評価額÷遺産分割時の対象財産の時価で計算をすると判断しています。ここでの問題は相続人の間で税額の不公平が生じかねないという点です。現在の通達(行政解釈)でも,代償金が遺産分割時の時価をもとに算定されている(遺産分割時の時価と相続開始時の金額で乖離がある場合)には,先ほどの計算をもとに税額を考えるとされています。先ほどの計算によって,代償財産の金額を評価するという話になります。代償金額を算定するにあたってはその手掛かりとなる資料が必要と思われますので,時価や相続税評価額の根拠資料がある場合は多いものと思われます。

 実際には遺産分割時に弁護士など法律専門家や課税の問題が生じている場合には税理士といった税務専門家が介在するので,評価の誤りが出る場合はそこまではないかと思われますが,遺産分割と課税の話が出る際には頭に入れておいた方がいいでしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。