法律のいろは

遺言書に「まかせる」等と記載のある場合に,どのような意味に考えるのでしょうか?

2021年11月29日 更新 

 遺言書の記載が曖昧で複数の意味が考えられる場合に,どのような解釈をとるべきか・有効性すら問題になる場合があります。詳しくは別のコラムでも触れていますが,無意味な記載をしたものなのか・遺言としての意味を持つ(無効原因はない)けれども,どのような意味なのかが問題になる等問題となる場面は複数考えられます。

 

 問題となる場面は,相続させる・遺贈の対象となるモノが何か分からない場合,今回触れる「まかせる」という記載がある場合にどのような意味なのか等が考えられます。遺言の解釈はその言葉の持つ意味を前提にはしますが,前後の文脈や作成の経緯・「まかせる」相手との関係等様々な事情を考慮して,遺言者の意思を解釈することになります。解釈の内容自体に争いがある場合には,裁判手続きで裁判所の判断が示されることになります。

 ここでの任せるは,対象となる財産を譲るという意味も考えられます。このほかに,管理を任せるという意味・今後の遺産に関する手続きを主導してほしいという希望など複数の意味もありうるところです。この意味するところをどうとらえるのかによって結果が大きく変わりますので,重要性を持ってきます。

 

 「まかせる」という文言の意味が問題になった裁判例は複数あります。そのうち,大阪高裁平成25年9月5日判決では,「相続させる」との意味藍で解釈しています。このケースでは,公正証書遺言と抵触する内容の自筆証書遺言が作成され,「全ての財産を〇〇にまかせます」等との記載があり,この意味が問題となっています。これは「相続させる」という意味合いであれば財産をすべて引き継ぐことになり,そうでないと引継ぎの内容が大きく変わるためです。判決文からは問題となったのは,預貯金を引き継いだのかどうか(払い戻しができるのかどうか)という点で金融機関や他の相続人も巻き込んでの裁判であったようです。

 この裁判例では,先ほど触れた事情,特に遺言作成に至る経緯やその際の遺言をした方の置かれた事情を事実認定をもとに検討しています。「まかせる」ことになった経緯や「まかせる」相手と遺言者との関係(交流や世話の状況など)を踏まえて,このケースでは「相続させる」という趣旨と考えて問題ないとの判断をしています。

 

 あくまでもこのケースでの事情を踏まえたうえでの判断です。事情によっては,公正証書遺言で専門家からアドバイスを受けているのだから「相続させる」「遺贈」という言葉の意味を遺言をした方も分かっているはずなので,違う意味と考えるべきという場合もありうるかもしれません。このケースでも公正証書遺言が先に作成されていましたが,裁判所は専門家でもない素人であるから区別して考えていないことも十分にありうると判断をしています。実際にそのように言えるかどうかはケースごとの作成の経緯(専門家から何度もアドバイスを受け理解している場合,その方の年齢などによっても変わってくるでしょう)によっては同じようには考えられない可能性があります。遺言書を作成した時点での関係性や遺言をした方の健康状態や状況にもよるところと思われます。実際,「相続させる」という趣旨とは証拠上考えられないと述べた裁判例も存在するところなので,一般に手続きを主宰してもらうのでは「まかせる」が意味がないという話をするだけでいいのだろうかという問題はあります。

 

 一番は後で疑義が出ないような内容の遺言書を作成することですが,解釈に争いがある場合には作成の経緯や遺言者の当時の状況等がどういったものであるのか・その裏付けは存在するのかなどを考えておく必要があると思われます。

 

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