法律のいろは

お墓を相続する人はどのように決まるのでしょうか

2021年12月26日 更新 

 故人の遺産をどのように相続するかと合わせて、しばしば問題になるのが、お墓や遺骨は誰が引き継ぐのかということです。

 お墓を誰に引き継いでもらいたいのか、故人が生前遺言書を残してくれているとよいのですが、実際には遺産についてはもちろんのこと、お墓をどうすればよいのかという点も全く故人の意向が明らかでなく、遺産の分け方と合わせてトラブルになるケースが見られます。

 お墓は他の相続財産とは違う特殊な扱いをされています。お墓や仏壇仏具といったものは一般的に財産的価値を評価するのが難しいため、遺産分割の対象にはならないとされています。そのため、お墓については仏壇仏具なども含めて「祭祀承継者」という,神仏や先祖を祀るための家系図や巻物などの系譜,祭祀や礼拝に使われる位牌,仏壇,神棚等,お墓を引き継ぎお墓参りや法事などの祭祀を主宰する人を決め,その人が管理をしたりするということになります。

 それでは,この「祭祀承継者」についてはどのように決める・決まるのでしょうか。

 祭祀承継者には一般的に相続人のうちの一人がなることになります。ただ,相続人でなければなれない,というわけではないので,故人が相続人以外の人に指定していれば,その人が祭祀承継者になります。ただ,墓地の規則で承継者を相続人や親族といった限られた範囲に限定していることもあります。あらかじめ指定しておく場合には,引き継いだものの墓苑管理者との関係で引き継いだ旨が認められないとトラブルになる可能性があるため、あらかじめ確認をしてから誰に指定するか決めるのが良いでしょう。

 故人の指定がなければ,慣習により祖先の祭祀を主宰すべき人が祭祀承継者になります。よくあるのが直系の長子が引き継ぐというものでしょう。故人が指定しておらず,慣習も明らかでない場合には家庭裁判所に申立をして,祭祀承継者を決めてもらうという場合もあります。この場合は,相続人など利害関係を持つ人から,家庭裁判所に対して祭祀承継者指定の調停または審判の申立をすることになります。共同相続人はこの手続きに全員参加する必要があります。家庭裁判所は申立があった場合には,これまでの祭祀承継者の意思や相続人と祭祀承継をする人との関係,過去の生活での関係や祭祀を主宰する意欲や能力,管理が必要な墓地等との距離関係,利害関係を持つ人の意見などを踏まえて,一番ふさわしいと思われる人を祭祀承継者に指定することになります。

 このような手続きを経て祭祀承継者が選ばれた場合には,祭祀承継者になることを断ることが出来ません(遺産相続と違い,相続放棄のような制度がありません)。前述のように祭祀に関する財産は相続財産には含まれないため,相続放棄をした場合でも祭祀財産を引き継いで祭祀承継者になることもあります。

 祭祀承継者に指定された場合,墓地などの祭祀財産の管理を引き継ぎ,墓地の管理料の支払いや草刈りなどの管理,永代供養であれば供養料の支払い,法事の主宰などを執り行うことになります。遺言で祭祀承継者が指定されていると,墓地の管理や法事の主宰等でかかる費用等も配慮した相続分の取り決めをすることがありえます。ただ,そういった指定を遺言書で行うといったことがない場合には,これらの墓地の管理等や法事でかかった費用などを他の相続人や親族に当然請求できるというわけではない点に注意が必要です。遺産分割が未了である場合には,こういった諸経費が祭祀承継者の負担になる点を踏まえた取り分の分配交渉を行う必要があるでしょう。

 祭祀承継に関しては任された人がどの程度まで行うか,特に法律上決まっているというわけではないため,祭祀承継者をせっかく指定したとしても祭祀財産を他の相続人に断わりなく処分する,法事を主宰しないということもありえます。そういう場合には他の相続人に変更するなどの手続きを取ることを検討する必要があるでしょう。

 このように祭祀承継者については通常の相続財産に関することと違った側面があります。最近では新しく墓を建てるというより,墓じまいに関する相談が多いということを聞いたことがありますので,こういた祭祀承継を巡る問題は今後少なくなるのかもしれませんが,遺産分割と合わせて問題になることもありますので今回取り上げさせて頂きました。

 

 

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