法律のいろは

遺言で遺産分割を当面禁止することの意味,その場合でも遺産分割は可能?

2021年12月30日 更新 

 遺言では法律上遺言で決めることができることの他様々な記載をすることがあります。法律上意味があるのは法律上遺言で定めることができるとされているものです。そのうち,財産(遺産)を配分するように定めるケースが多いかとは思われますが,場合によっては当面遺産を相続人の間で共有してほしいという遺言者の考えから,遺産分割を禁止する内容を定めることも可能とされています。

 この場合は,当面遺産を共有したほうがいいと考える遺言者の考えが尊重されることになります。そうなると,遺言の記載に反して遺産分割を相続人ができるということになると尊重をしてこうした遺言を認めた意味がなくなります。そのため,遺言で遺産分割を禁止している場合には,その有効期間の間における遺産分割は効力を持たないことになります。ただし,遺言の記載の内容は遺言者以外には分かりません。そのため,遺言で引き継ぎを当然に行う相続人以外の方が知らない遺言書の記載に縛られることには問題が出てくることになります。この場合には,事情を知らない第3者を保護する法律の規定を使って問題を解決することができるかが問題になります。ちなみに,この問題には今述べた考え方と反対の見解も存在します。

 その見解によれば,遺産分割の協議は自由にできるのだから協議は遺産分割禁止の遺言があっても自由にできることになります。こちらの考え方によるにしても争いが生じた場合に,遺産分割が無効になる可能性があるかもしれないことは頭に入れておく必要があるでしょう。

 

 先ほど述べたように遺産分割を遺言で禁止するにしても上限が存在します。法律上それは5年間が最長です。その更新を行うようにしておくことは,遺産を共有しておくことや遺産分割までの暫定的な状況であると考えられることから無効(できない)と考えられています。これに対して,遺産分割禁止期間経過後も相続人が全員の合意で遺産分割をしないことを合意をすることは自由です。これは,本来遺産分割が可能なものを分割しないという選択を行った(分割のいくつかある選択肢の中で分割しない選択を行った)ということで有効性を否定する理由がないためです。ちなみに,相続人の協議の他に家庭裁判所の調停によって分割禁止を取り決めることも可能ですし,審判によって分割禁止が定められる場合もあります。

 ただし,審判によって遺産分割が禁止される場合は,本来分割事由が原則なものを制限するので,そう判断するだけの特別な理由が要求されています。そうした理由としては,すぐに遺産分割をすることが相続人全員の利益に反する(当面禁止することが利益にかなう)ことが挙げられます。具体的な場合としては,認知や親子関係をめぐる争いといった相続人の資格に関する紛争・遺産の範囲をめぐる紛争が存在し,その解決を待ってから遺産分割をした方がいい場合です。このほか,すぐに遺産分割をすることで相続人に大きな打撃を与える場合も等含まれるとする見解も存在します。

 また,遺言での遺産分割の禁止は遺産全て以外に特定の遺産についてのみ共有にしておきたいということで,その遺産だけと指定しておくことも可能です。これに対して,全ての遺産のうち,一部の割合だけとするのは共有になっている遺産が何かはっきりしない問題がありますので,できないと一般的に考えられています。

 

 このように遺産分割の禁止は遺言でなされる場合,相続開始後になされる場合があります。その場合の意味や遺産分割を行うことへの影響をよく理解しておいた方がいいでしょう。

 

 ちなみに,令和3年の法律改正により,相続人の合意による遺産分割を禁止する合意はできるものの10年までの範囲で一部または全部の合意ができることとなりました。これまでせいぜい5年以内と考えられてきた点の改正となります。この兼ね合いで先ほど触れた家庭裁判所の判断による分割禁止も同様に10年以内とされます。

 

 

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。