法律のいろは

デジタル遺産とは何でしょうか?①(法律上の扱い・問題点とは)

2021年12月30日 更新 

 今や日本人でもかなりの人数の方がスマートフォンやパソコン,アイパッドなどを持つようになっています。また写真もかつてのネガからデジタルでの保存に替わってきており,それに伴い,新たに「デジタル遺産」という概念が現れるようになりました。 

 デジタル遺産とは,スマホ内の写真(以下の「デジタル遺品」と重なる)、ツイッターやFacebookなどのインターネット上の財産を指すとされています。これにはインターネット銀行や証券の口座,電子マネー,暗号資産(仮想通貨)も含みます。

 また,デジタル遺品とは個人が残したもののうち,デジタルデバイスによって,保存されているデータがインターネット等で利用できる状態にある写真のデータなどのことを指します。

 これには

 ⑴デジカメやスマホ・パソコン内のファイル等のデジタル機器内のデータ

 ⑵SNS上の写真などインターネット上のデータ、アカウント

の大きく2種類があるとされています。

 こういった「デジタル遺産」「デジタル遺品」が法律上の相続財産になるかが近年問題とされるようになってきました。この点,民法896条では,「相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りでない」と規定されています。デジタル遺品も一般的な財産的価値があれば相続財産に当たり得ることに問題はないとされています。実際には保存されている機器を通じて実質的には相続可能な財産になりうるとの扱いになると思われます。

 これに対して,家族の写真など,本人や遺族のみ価値があるものはどのように考えられているのでしょうか。こういった本人や遺族のみ価値があると思われるようなものについて判断をした,高松高決昭和3618日では,「使用価値,交換価値のほとんどない場合は,相続人が特別の愛着を持ち,主観的価値が高いと認めるものでない限り,しいて遺産分割の対象に加える必要がない。」と判断しています。この判断に従うと,主観的価値が高ければ遺産分割の対象になりうることになります。

 デジタル遺産・遺品の特性・問題点としては,デジタルで保存されているものであることから,そのままでは利用できないことが多く,保存されている機器の操作が必要であることが挙げられます。また,複製作成が簡単にできることから,インターネットなどで拡散すると回収困難になる可能性が高いうえ,劣化もしないので,一度拡散してしまうと残り続けるという問題点もあります。

 また,電子マネーや暗号資産には郵送による通知がないものもあり,どこにデータが保管されているのか把握が難しかったりして放置されるものが増えてきているといわれています。特にインターネット銀行や証券の場合,利用者が使用しているサービスのID・パスワードが分からず、相続人からアクセスが困難であるということも問題点として挙げられます。また,被相続人がインターネット経由で契約をした投資信託を被相続人が死亡後解約しないといつまでも信託報酬が発生し続けるという点もデメリットということが出来ます。

 これ以外にも,デジタル遺産の相続での問題点として以下のことが挙げられます。すなわち,民法上相続人が数人あるときは,相続財産は共有に属するとされていますので,パスワード解除までは「保存行為」(民法252法ただし書き)として対応できますが,データごと処分は「処分行為」として相続人全員の同意が必要という面倒な点があります。

 次回は個別のデジタル遺産・遺品の扱いについてみていきます。

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