法律のいろは

親の代から使ってきた土地が別の方の所有物と主張され引き渡しを求められた場合の対応とは?

2022年1月5日 更新 

 法律上,所有者から使っている土地の引き渡しを求められた場合には応じる義務があるのが原則です。ただ,別の方の土地を利用するには利用権の設定をしている場合が多く,この場合には利用権がなくなっていない限りは引き渡しに応じる義務はありません。大きく言えば無料で使うことができる使用貸借とよばれるもの・有料で使う賃貸借というものがあります。土地の利用については地上権という権利を設定している場合もあります。

 このほか,別の方の土地を自らのものと信じるだけの事情がある場合に土地を市余裕する権利を取得する場合(時効とよばれるものです)にも応じる義務はなくなりますが窯こちらは法律が定める事情があるのかどうかが争いになることもありえます。

 

 先ほど挙げたうち,無料で使うことができる使用貸借と呼ばれるものは,借り手の保護が弱く,借主が亡くなった場合は別に合意がなければ終了することになります。また,利用期間の経過や利用目的に十分な期間が経過すれば終了することになります。利用に必要な期間は借りる際の利用目的との関係で,問題になることもありえます。この期間が経過していないということであれば,こちらを争うこと自体は可能です。親の代からご自身が使うようになってからも利用を許容されてきた場合には,新しく無料で使う合意があったといえる場合もありえます。

 また,有料で貸している場合には特に土地を借りる場合も契約で建物の利用を目的とする場合には中途での契約解約には大きなハードルが設けられるので,引き渡しを求められたから即応じないといけないわけではありません。ただ,いずれも応じるかどうか・その他応じるにしても何かしら交渉をするかどうかということは個別の話での判断を伴う話になります。

 

 これに対して,利用権は設定されていないけれども,時効によって土地を取得したという場合には法律の定める時効の要件を満たすかがポイントになります。法律上,継続的に・排他的に利用している場合には,いくつかの要件は満たしたものと推定されるため,継続的に・排他的に利用しているかが最初のポイントになります。ここで継続とはある時点と別の時点で排他的に利用していたという話を示せればとりあえずは足ります。例えば,25年前と5年前といった類です。問題は排他的に利用していたといえるかどうかです。例えば,何かしらの施設をつくってその方しか利用できない状況であったというのであれば簡単です。,山の利用のように他の方も利用可能で実際そうした事情がある場合には排他的に利用していたとは言えない可能性も出てきます。

 いつ頃の利用状況か・どのような利用状況かは時効の主張をする側で示していく必要があります。この話をクリアしても,土地の場合は通常登記をされているので,名義人でない場合には利用している方は自らに権利があると信じる点に少なくとも過失があるのではないかという反論を受ける可能性が高くなります。この場合は先ほどの継続的な利用期間が長ければいいのですが,さらに別の問題点があります。それは別の方の土地を利用するについては通常何かしらの利用権を設定しているのではないか・設定しているのだとなるとそもそも自らのものとして排他的に使っていないのではないかという話です。

 例えば,無料で使うという覚書や有料で使うという契約書の存在,地代の支払いがあれば,自らのものとは言いにくくなってきます。この場合は先ほどの利用権が続いているのかという問題へとなっていく場合もありえます。これに対して,土地の境界からはみ出ていた・友人や親せきの関係もあり,名義はそのままでも譲るという話もあり信じて使っていたという場合には話が変わってきます。ただし,後者はそもそもの事情を説明することは時間が経過すれば相当に難しくなってきます。その後の利用状況や地代を支払うことはあったのか・固定資産税の負担や名義人から何かしら利用に関して連絡があったのかなどの事情がどうかがポイントになります。ここが問題になるのは誰が所有しているのかが大きく争いになる場合です。面倒なのは親の代から使っている土地の場合,原則は親が自らのものとして利用していたのかどうか等の事情がご自身にも引き継がれるのが原則という点です。

 そのため,親の際の事情を出された場合に自らは違うというだけでは反論として十分でないことがあります。例外的に,ご自身が新しい事情によってその土地の利用を独立して開始したといえる事情がある・その事情から見て自らのものということができる場合は別です。たとえば,元々は駐車場として親が使っていた土地をご自身が利用開始する際には資材置き場とするなど利用形態が異なる利用開始によって使い始めたケースです。こうした場合に家賃も払わず自らのものとしてふるまっていたといえるだけの事情があれば時効の主張をすることが可能です。ちなみに,時効に関しては複雑な点があるので,別のコラムでさらに詳しく触れる予定です。

 

 いずれにしても,時効の主張にはケースによってはそう簡単にいかないこともありますので,見通しはどうかを考えておく必要はあるでしょう。

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