法律のいろは

デジタル遺産とは何でしょうか?④(デジタル遺品について・海外の動向も含め)

2022年1月2日 更新 

 これまでデジタル遺産に関して,日本の法制度での規律や具体的に個別の事項ごとに問題になりそうなことなど取り上げました。前回取り上げましたヤフーのサービスについてもですが、結局のところサービス利用者の方がデジタル遺産・遺品について関心が高くないこともあって、サービス提供が進んでいないのが現状です。

 ただ、今の時点でもパソコンなどデジタル関連機器を利用する高齢の方が増えてきているところですので、どちらにしても近いうちにまたデジタル遺産やデジタル遺品に関するサービスへのニーズは増えてくるのではないかと思われます。

 今回はデジタル遺品についてみていきます。亡くなった人が保有・使用していたパソコンを解析して,亡くなった方が作成したデータの取り出し,保存のサービスとして,「デジタル遺品復旧サービス」を提供している会社があります。こちらのサービスは亡くなった方が残した文書や写真のデータ移行やデータ取り出し,消去依頼があった場合の対応等をしているようです。なお,似たような意味合いで「データサルベージ」がありますが,これは亡くなった方のパソコンデータに限らず、機械の不具合などによって正常にデータの読み込みが出来なくなった危機からデータを取り出す作業やサービスのことを指すようです。

 こういったデータの復旧や削除以外で,遺族の依頼に応じた亡くなった方のネットサービスやSNSのアカウントにアクセス、情報の取り出し、削除を行うということになると,不正アクセス禁止法との兼ね合いが問題になってきます。サービス提供会社や各種SNSでは第三者からのアクセスについては前回②で取り上げた遺族等からの申し出でない限り制限しているのが一般ですので,この点まで提供するサービスは,後述のように利用規約で認められるようなことがない限り難しいといえます。

 また,亡くなった方の保有していたデータ復元にあたっては,作業によって逆に消去してしまう可能性もあります。そのため,相続人一人が復旧を依頼するとなると他の相続人も含めた了承が必要になることがありますので,その点も注意が必要です。

 なお.デジタル遺品関係については海外の方が対応が進んでいるようです。

 まず,アメリカでは46州でデジタル遺品法が制定されています。これはパソコンやスマートフォンに保存されたデータやアプリ,インターネット上のアカウント,仮想通貨などのデジタル遺産を適正に相続できるようにしています。デジタル遺品については法定相続人や弁護士など「受諾者」が管理できるものの,亡くなった方がが生前残した意思でアクセスの制限もすることができるとされています。他方で,オンライン上の資産についてはサービス提供側の利用規約によっています。

 また,EUではデータ保護の統一基準がありますが,遺品関係は各国での対応となっています。フランスでは,亡くなった方のオンライン上の資産でも適切に保管・相続できるような仕組みとされています。エストニアでは,デジタル遺産の持ち主の意思は没後30年まで有効とされているようです。30年は遺族が亡くなった方のデータを処理する権利を制限付きで肯定しています。スイスでは,亡くなった方の資産は持ち主の最終的な意思がなければ法定相続人が権利,義務とも引き継ぐとされているようです。

 なお,いずれの場合であっても利用規約が優先され,相続を認めないサービスであればどこでも相続は否定されることになります。

 このように各国での法整備はまちまちですが,少なくとも利用規約で規律されるオンライン上でのサービスについては利用規約上で相続を認める扱いにならなければ,相続人が引き継ぐには難しいということになります。

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