法律のいろは

他の方の財産を遺言で贈与(遺贈)できるのでしょうか?

2022年1月7日 更新 

 遺言で財産を贈与(遺贈)する場合,通常は自分の財産を残すことが通常かと思われます。遺言で他人の財産を贈与することができるのかという話がありますが,結論から言えば,他人から財産を調達しその財産を贈与するという趣旨であれば有効です。他の方の財産を贈与するという場合には,自らの財産かと思って遺言で贈与しようと思っていたところ後に他人の財産であることが判明したという場合と元から他の方の財産であってその財産を調達して贈与するという場合がありえます。

 

 自らの財産だと思っていて別の方の財産であることが判明した場合には,そうした方の財産を贈与する意思が遺言を残した方にあるとは考え難いので,この場合には遺言は無効であると考えられます。とはいえ,他の方の物であっても時効その他の原因で取得していると法律上扱われる場合には,その方のものになるので他人のものという問題はなくなります。時効の場合には意思の表明が必要ですが,骨とう品や絵画などの動産と呼ばれるもの(自動車など登録が必要なものは別です)は意思表示の必要なく権利を取得することが可能な場合がありますこの場合も同様に他人のものかどうかという問題はなくなります。

 これに対して他の方の財産であることを前提に(遺言をした方が分かったうえで)贈与をするという遺言をした場合には,その遺言は有効です。先ほどとの違いでいえば,遺言者が理解をして意思を表明している場合にはできる限り有効に扱うためです。他人のものと気づいていたかどうかは調達の義務を定めていた・生前から自らのものではないと理解をしていた場合の話になりますので,前提事情がどうであったのかという点が問題になることもありえます。また,遺言の記載によって有効性に疑義を持たせないようにしておいた方がいいでしょう。

 

 それでは,他の方の物を贈与するとはどのような意味でしょうか?他の方の物であっても売ることや贈与をすること自体は可能です。ただ,これだけで他の方から権利を当然に取得することはできませんので,その方から権利を調達する必要があります。この場合にはその調達をする方を定めておく必要があります。この方は遺贈義務者と呼ばれ,調達を行い贈与を完結させる義務を負います。義務を果たせない場合には取得に必要な費用の支払い義務を負います。もちろん,遺言でそこを免除する話が定めてあれば話は別です。

例えば,著名な絵画や美術品を相続人に調達して贈与するように遺言をしていた場合には尾の遺言は有効で,相続人は調達して贈与をする義務を負います。ここでいう贈与には団体への寄付などを含みます。調達は特定のものであればその物になりますし,ある種類の車を調達して贈与であれば,その種類の車であれば何かしら調達を行えば十分になります。調達できない場合には,相手方が譲渡することに応じてくれない場合もあれば,話し合いの結果その他により費用が過大にかかる場合も含まれます。

 

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