法律のいろは

デジタル遺産とは何でしょうか?②(個別のデジタル遺産などの取り扱いについて)

2021年12月31日 更新 

 前回はそもそもどのようなものがデジタル遺産にあたるのか,その具体的な内容と法的規律について触れました。今回は引き続き個別のデジタル遺産や遺品が実際にどのように扱われているかについて取り上げます。

・ネット銀行の権利

 ここ最近ではこれまでの銀行取引(店舗に出向き,窓口等で手続きをする)以外に,インターネット上の取引を行うことも増えてきたと思います。また,インターネットでの取引のみ扱っているという銀行もあります。このようなネット銀行における権利についてですが,通常の銀行と同様に書面での手続きで相続人が預金などの権利を相続することになります。まずはネット銀行に問い合わせをして,手続きに必要な書類を郵送で送付してもらい,必要なものを準備して送り返すという流れになります(この点は通常の銀行における場合とそんなに変わらないといえます)。

 

・仮想通貨(暗号資産)について

 仮想通貨については,2018年11月に手引きが国税庁より出されています。これによると仮想通貨の交換業者に残高証明書の発行を依頼し,残高証明書の内容に同意すれば代表相続人の口座に亡くなった日のレートで現金の振り込みがされ,これを税務署に納税申告するという流れになります。ただ,仮想通貨の場合はビットコインなどメジャーなものであれば判明しやすいでしょうが,マイナーなものの場合(活発な市場が存在しないとき)は客観的な交換価値を示す相場がないということになるため,仮想通貨の内容や性質,取引実態等を踏まえ個別に評価するとされています。こういったマイナーな仮想通貨の場合,被相続人が知らせていないときには,そもそも相続人が見つけられるかという問題があったり,海外の交換所にさらに移動しているときにはたどるのが困難,などと言った問題があり,これについてはまだ法的な手当がされていないことからこれからの動きが待たれるところになります。

 

・航空会社のマイレージポイント

 これについては相続可能とされています。航空会社となると一般的にJAL,ANAになると思いますが,ANAの場合被相続人が死亡後6カ月以内の申請が必要とされています。

 

 これら以外のよく最近では利用されると思われる,Tポイント、ナナコなどのポイントは相続できないのが一般とされています。また,オークションやフリーマーケットなどのサービスでもアカウントの相続は出来ないのが通常です。たとえば,メルカリの場合,取引中は退会手続きが出来ず,退会すると保有ポイントはすべて消滅するとされています。

 これらに対して,オンラインでのサービス利用の際に被相続人が保有していたアカウントや写真類などのデータがどのように扱われているのでしょうか。一般的にSNS等のインターネット上の写真等やアカウントの処理については,被相続人の方と業者との契約なので,規約等により決められている内容に従うことになります。一般的にアカウントは契約上で一身専属的なものとされており,相続しないとされています。ただ,相続人から被相続人のアカウントを追悼アカウントへの変更することは可能とされています。

 以下,主なSNSでの扱いを見ていきます(2021年12月時点)。なお,これらについては随時規約等が変更されているため,確認が必要な場合は最新のものを見られることをお勧めいたします。

・Google  アカウント無効か管理ツールであらかじめアカウントの処理を決めることが出来るとされています。被相続人が明確な指示が無く死亡した場合,家族等に連絡を取り適切と判断すれば故人のアカウントを閉鎖することになります。場合により亡くなったユーザーのアカウントからコンテンツを提供することもできます。

・Facebook 追悼アカウントの管理人を指名して管理を任せるか、アカウントを完全に削除するかを選ぶことができます。アカウントを完全に削除しないことにした場合は,亡くなったことをFacebookが認識した時点で自動的に追悼アカウントに移行します。ちなみに追悼アカウントとは,利用者が死亡した後に友達や家族が集い,その人の思い出をシェアするための場所として提供することになります。プロフィールにあるアカウントの所有者の名前の横に「追悼」と表示されます。

・Instagram リクエストにより追悼アカウントへの変更やアカウントの凍結となります。変更する場合には死亡記事・ニュース記事へのリンクなど死亡を証明できる書類が必要です。故人の近親者と証明できる方に限り,個人のInstagramアカウントの削除をリクエストできることとされています。

・TwitterやLINE 現状アカウントの削除のみ対応するとされています。Twitterではリクエストするとその後の手順について説明をしたメールが届くようです。LINEの場合特に手続きをしなければアカウントはそのままのようですが,メールアドレスやFacebookアカウントの登録がないと,もともと紐づけされていた電話番号を他の人が使うようになると元のアカウントが削除されてしまうことがあるようです。

 このようにサービスごとに扱いが違うので注意が必要です。

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