法律のいろは

デジタル遺産とは何でしょうか?③(デジタル遺産の処分について等)

2022年1月1日 更新 

 以下、デジタル遺産について、今の法制度ではどのような規律があるのか、個々のデジタル遺産や遺品の扱いについて触れました。

 このデジタル遺産については、オンラインとオフラインで分類する方法があります。その①の方はどちらかというとオフラインの方について、②はオンラインについて取り上げています。

 このうち、オフラインは亡くなった方のデジタル機器に保存されたものになります。データについては著作権法その他知的財産権上の保護が及ぶものであればそれに従うことになります。データに対する権利の法的性質等が問題になりますが、これについては先の知的財産権に関する法律以外で別途定めが現状されていません。結局のところ、データ等が入っているデジタル機器等の相続と一緒に事実上の地位が承継されるといえます。

 これに対してオンラインの場合は、SNSなどのデジタルデータやアカウントになります。データに関する権利の法的性質、アカウントの相続の可否、データの開示・引き渡し請求の可否など問題になります。ただ、前回の②で取り上げましたように規約ごとの定めになりますが、アカウント自体の相続やデータの開示、引渡しについてはかなりハードルがあり、基本的には否定されています。

◆デジタル遺産の処分について

 こういったデジタル遺産について、あらかじめ相続人などに引き継いでもらいたいという場合にはどのような方法があるでしょうか。今のところでいうと方法は大きく2通りになります。

・遺言による方法…この場合、「付言事項」としてデータの消去を求めることは可能ですが、記載があったからといって法的義務が生じるものではありません。これ以外にデータの処分やWeb上の各種サービスの削除等を負担の内容として財産を遺贈する方法もありえますが、遺贈を受ける人にあらかじめ頼んでおかないと放棄されてしまう可能性があります。

・死後事務委任契約による方法…第三者にデジタル遺産のその後を任せておくというものになります。実際のところは特に親族の場合、任されたところでどうすればいいか分からないということが一般的でしょうから、あらかじめデジタル遺産の取り扱いやインターネットの各種サービスに詳しい業者等への依頼が無難でしょう。その場合は委任者である人本人が死亡した旨の通知が委任を受けた者(業者等)にきちんとされる仕組みが必要になってきます。

◆デジタル遺産に関する動き

 ここでデジタル遺産に関する動きについて少し見てみます。

 終活サービスとしては、2014年7月より、人生の最期に係る総合ポータルサービスとして、生前に申し込むと利用者の死亡確認後にネット上で保存した文書や画像など削除できる、メッセージ/ヤフーボックスのデータ削除、有料サービスの課金停止などを行うサービスの開始(Yahoo!エンディング・フルライフ倶楽部)を一時されていました。

 このサービスでは、利用者の死亡確認により利用者が事前に登録をした人(最大200人)宛てに「お別れメッセージ」を自動配信できたり、メモリアルスペースに家族や知人(指定された人)がアクセスできるといったものも含まれていました。

 ただ、このサービスについては利用者が想定よりも低かったようで、一部を除き2016年3月いっぱいで終了しています。

 なお、このサービスでも、データ削除だけでなくメールや写真を遺族に移すことについては、相続などで利用者の死後にトラブルに発展する危険があるとして対応していませんでした。データを「遺品」とみると、相続人が相続することにはなる(民法898条、899条)のですが、遺言がないとどれをどう分けるかの争いになる可能性があります。現状では事前にデータを保有する人の承諾があっても、個別に対応は難しいのではないかといえます。また、有効な遺言が存在していなくて、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議が終了するまで共有の状態になります。その場合は他の相続人の同意なく処分をすると他の相続人から所有権侵害と主張されるリスクもあります。

 このように、いまだデジタル遺産について十分な法整備がされていない現状、デジタル遺産に関連したサービスも多くはないのが現状といえます。

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