法律のいろは

相続放棄をした後でも,相続放棄の効果が失われることはあるのでしょうか?

2022年1月23日 更新 

 亡くなった方の負債を引き継ぐ等の事情を回避するために相続放棄という方法があること・放棄の前に財産の処分をすると相続放棄の効果が失われる可能性があるという話は別のコラムで触れました。今回は財産の処分以外に相続放棄の効果が失われることがあるのかについて触れていきます。

 

 結論として言えば,そうした場合はあり得ます。法律上,相続放棄をした後であっても,遺産を一部でも隠匿する・使ってしまう・財産目録から特定の遺産を載せないようにする等の場合が相続放棄の効果が失われると定められています。ここでいう相続放棄の効果が失われるとは,法律上単純承認したものとして扱われる場合を指し,当然に相続により引き継ぐ扱いとなる結果相続放棄(最初から相続人でないこととなって引継ぎを行わない)という場合に当たらなくなることをいいます。

 

 例えば,遺産に含まれる貴金属のみを見つからないように隠すような場合をいいます。この制度は,相続放棄をした方であっても新たに相続人となる方などが遺産の管理を始めるまでは,遺産の管理義務を負う(法律上は自らの財産と同一の注意義務とされています)ため,その管理義務を怠るどころか悪意綱行動をとったことに対する制裁的な意味を持たせる制度とされています。相続放棄の前後を問いませんし,限定承認の前後も問いません。ここでは悪質な行動に対する制裁の意味がありますので,亡くなった方の債権者がお金を回収しにくくしようとする意図まで要求されていますが,保管していたのを失念したような場合を除き,見つからないように隠しておきながら悪質な意図ではないというケースはそこまで内容に思われます。

 ちなみに,今触れました相続放棄をした場合の管理義務については,令和3年の法律改正がなされています。この改正法施行後は,義務を負う場合が,相続放棄をした方がその財産を「占有」している場合には,後に相続人となる方や相続財産の清算を行う方に引き渡すまで,その財産をなくす・損傷させないようにする義務が課されるようになります。ここでいう「占有」とは自分で管理している場合以外に人に管理している場合も含みます。全くかかわりがない場合に義務を課さないという意味合いがあります。

 

 ただし,例外的に制裁という意味で当然に引き継ぐという扱いを受けない場合もあります。それは,相続放棄をしたことにより相続人となった方が引き継ぐ旨の意思を示した後に隠匿などが行われた場合です。例えば,亡くなった方の親は死亡し,配偶者・子供が相続人で兄弟姉妹も生存していたケースで考えてみます。配偶者や子供が相続放棄をすると兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が遺産を引き継ぐ意思を示す前に子どもが遺産の一部を隠すと相続放棄の効果が失われますが,兄弟姉妹が遺産を引き継ぐ意思を示した後はそうならないという話になります。

 この理由としては,先ほどのケースで兄弟姉妹が引き継ぐ意思を示すと遺産の管理義務は兄弟姉妹(新たな相続人)が負うことになり,相続放棄をした方の管理義務はなくなります。管理義務がありながら怠るどころか悪質行為に及ぶことがペナルテイを受ける理由であるため,管理義務が亡くなった後にはペナルテイを受けるいわれがなくなるからという話になります。とはいえ,負債を多くもつ・その可能性がうかがわれる方について相続放棄がなされた場合には,次に相続人になる方も相続放棄を行う可能性が高いのが通常ではないかと思われます。そのため,自らが相続放棄を行う場合には次に相続人になる方も相続放棄を行う可能性が高いと考えて,後のトラブルリスクを避けるのがトラブルを避けたいと思うのであれば取っておいた方が安全な対応と言えるでしょう。

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