法律のいろは

遺留分侵害額請求がなされた場合に侵害金額が大きく争いになる可能性がある場合とは?

2022年1月22日 更新 

 遺留分侵害額請求では改正前の遺留分減殺請求とは異なりお金の請求の問題となりました。このお金がどのくらいになるのかは財産の評価の問題が出てくるため,金額が大きい遺産・財産が存在する場合には対立が大きくなる場合があります。遺留分侵害の有無を計算する方法は法律で定められています。他方で,預金や現金と異なり財産の評価が難しいもの(時価といっても一義的に決まるものではないという点があります)が存在します。市場取引のされている金やプラチナ・上場会社の株式や投資信託はここでの評価額(評価時点では相続開始時点)であれば足ります。これに対し,不動産の価格や上場ではない会社の株式等では対立が大きくなる可能性があります。

 

 不動産については固定資産税評価額や公示地価のように地価を示す要素が複数ありますし,相続税評価で用いられることのある路線価等のようなものもあります。ただ,固定資産税評価額は公示地価の70%などの手掛かりはあるものの,不動産業者の出す簡易査定等のものも存在します。公的な公表されている資料や簡易査定は安価に手が入る反面,ここでトラブルになったお互いに評価額の同意がない場合には不動産鑑定による評価を行うかどうかが問題になります。

 不動産鑑定士の方による鑑定は信用性はあるものの,紛争の当事者が依頼したものについて当然にその鑑定によるとは限らず,裁判所の手続きに至っている場合には裁判所での鑑定に至る可能性があります。田舎の土地で評価額が大きくはならないことが見込まれるものやそこまで高額ではない家の場合に,大きく費用のかかる(ものによっては数十万円単位は少なくともかかる可能性のあるものもあります)不動産鑑定まで行うかはよく考える必要があります。お互いの提出している資料の金額や費用対効果を見極めながらどこで折り合うかを考える必要があるケースもありえます。

 

 次は非上場の株式です。多くの中小企業がこちらに該当するのではないかと思われます。特例を含めたいわゆる法人版事業承継税制(相続税などの納税猶予と免除の制度)の活用など相続税対策に目が行きがちな可能性もありますし,相続税を考える際の評価金額(多くは財産評価基本通達を基にしたものと思われます)が全てではないかと考えがちです。しかし,遺留分侵害額が大きく問題となりその財産の評価額も大きなものになりそうな場合にはそうはいかない可能性があります。それは,相続税を考える際の評価額は絶対的な株式の評価方法というわけではなく,他にも純資産価額で考える方式等複数の評価の方法が存在します。財産額が少なくわざわざ費用や手間までかけて非上場株式の評価を複数の方法で行うことは考え難い反面,費用対効果が大きい可能性のある株式評価が大きいものになりそうなケースでは大きく評価自体が問題になる可能性があります。

  実際に大きく問題になる場合は公認会計士の方に先ほどの不動産の場合と同様に鑑定をしてもらうということがありえます。この場合にその会社の持っている資産に不多数の動産がある場合にはそこにも不動産鑑定が必要なことが出てきます。ここでも費用が高額化しる可能性があります。株式の評価の方法は複数の方法が存在(併用方式もありえます)し,必ずしも相続税評価で解決しない可能性がある点には注意が必要です。逆に言えば,遺留分の事前対策を考える際に株式の評価や不動産の評価が大きくなりそうな場合には,今述べた点も考慮して対策を考えた方がいい場合もあります。

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