法律のいろは

夫婦で遺言を書く際に避けるべき「共同遺言」とは?

2022年1月15日 更新 

 終活という言葉が言われて久しい感がありますが,仮にご夫婦で遺言を残す際には先に亡くなるのがどちらかなのか・相続税などの負担がどうなのかなど気になる点はたくさんあるところです。今回は基本的(?)なところとして,せっかく遺言を残しても法律上無効となる「共同遺言」というものについて触れておきます。

 

 遺言は自筆で書いたものが要式について細かく違反を無効としている以外に,遺言の内容が意味を持たないもの・そのほかに禁止されている(違反が無効になるもの)が存在します。その一つに「共同遺言」というものが存在します。共同遺言とは,二人以上の方が同じ遺言で遺言を行うことを言います。分かりにくいので具体的な例を挙げますと,夫婦が遺言を残す場合に,「私たち夫婦が亡くなった場合には,自宅の土地建物を売却しその代金を〇〇に遺贈する」というものが挙げられます。

 夫婦が亡くなった場合のことを考える上ではこうした記載も思いつくところですが,以下で述べる不都合が出てきます。そもそも,先にどちらかが亡くなった場合にどうなるのかよくわからないという話等個々人がどのような意向を具体的に持っているのかわからないという点があります。その他,遺言の記載内容を解釈する際に,遺言をした個々の方の真意がどこにあるのかを考えることになるので,二人以上の方が同じ遺言で遺言を残してしまうと各自の真意がわかりにくくなってしまうという点があります。その他,遺言は残した後でも撤回は自由ですし,矛盾した内容の遺言を後で残すこともその他財産の処分ができることもあって,どの場合に誰がどう撤回をしたのかなどの判断が難しくなってしまう等の点も難点となってきます。こうした何点から複雑な話になるのを防ぐために「共同遺言」は禁止されています。

 

 それでは,「共同遺言」を考える際の遺言の個数はどう考えるのかが気になるところです。同じ書類に夫婦が各自遺言を残していれば共同遺言なのかという点が問題になりますが,遺言内容を分けることができそれぞれ誰が遺言をしたのかが分かれば,同じ書類であっても「共同遺言」とは言えなくなります。

 裁判例の判断の中にも,夫婦の名前が遺言書の中にあり,一方が亡くなった場合は他方が全ての財産を引き継ぐという趣旨が夫婦それぞれについて記載をしている遺言について,無効と判断したものがあります(大阪地裁昭和52年11月30日判決・最高裁昭和56年9月11日判決)。この判断では,夫婦それぞれ一方の遺言部分のみを無効とすれば足りるという言い分について,それぞれの遺言部分が互いに影響を及ぼしあっているという趣旨の点から,個別の遺言のみ有効とするのは難しいという判断を示しています。

 形式的に同じ遺言書でお互いに関連しあっているという記載になっていれば,同じ問題が出ます。そもそも別々に様々なケースを想定して遺言を残すことを意識することでお互いの意向が関連しあっているため,記載の内容や撤回について複雑な問題を避けることができます。別々の書類にすることも可能であればしておいた方がいいでしょうけれども,こうした禁止・無効となっている理由も意識した対応が必要となってきます。

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