法律のいろは

令和3年の相続に関する法改正による相続財産の管理に関する制度の変更とは?

2022年2月3日 更新 

 令和3年にいわゆる所有者不明土地等の問題解消等を目的として民法などの改正が行われました。令和5年には改正内容が施行されますが,相続財産の管理制度について簡単に触れていきます。これまで,相続財産を当座管理する方がいない(管理について対立もあって問題がある場合を含む)については複数の制度が存在していました。いわゆる当座の管理(保全行為)を行うための制度です。このほかに,相続財産管理人という清算を行うための管理制度も存在します。

 このうち,前者の当座の管理を行う制度を統一し,相続財産管理人の制度を相続財産の清算人の制度と名前を変えることになりました。現在とりあえずの遺産の管理を行う制度として,相続人が自らの財産と同一の管理義務を負うことを前提に,利害関係を持つ方などの請求によって家庭裁判所が選任した管理人による保存的な管理を行う制度があります。このほか,相続人が限定承認や相続放棄を行った後にも用意されています(限定承認を行った後の相続人や相続放棄を行った後の相続人にも管理義務があります。このうち,相続放棄後の相続人の管理義務は今回の改正によって明確化などが行われた面があります)。

 

 この制度による場合は,そのまま相続人が引き継ぐ場合(単純承認)の当座の保存を行う制度が十分なのか・相続人がいるのかはっきりしない場合の当座の管理型の制度がないという点が問題として言われていました。前者は現在も一応当座の管理の制度自体はあります。後者は精算型の制度としての相続財産管理人の制度がありますが,手続きに時間がかかる場合もあり当座の管理という面では不足している部分もあります。

 新しい制度はといつ的な保存の制度として,相続人がいることが判明しているかどうかにかかわらず,利害関係人等の請求がある場合に家庭裁判所が選任をすることになります。当座の管理として行う内容は,行方不明の方の財産管理の制度である不在者財産管理人と基本的には同じ内容になります。この管理の中で亡くなった方の負債の支払いをできるかどうかという点の問題がありますが,原資ねん出のための財産売却には家庭裁判所の許可が必要とされています。そもそも,支払いには財産を使うことから同様に許可が必要になるでしょう。これに限らず,遺産の一部の財産は当然に売却できない(家庭裁判所の許可が必要,当然に当座の管理に必要とは言えないこと等からです)点には注意が必要です。

 

 改正により当座の管理は統一された管理制度に基づくことになるでしょうが,当座の管理の精度が使える場合が拡充されることになります。清算型の相続財産管理人制度は名前が相続財産の清算人の制度に代わるとともに,手続きの合理化が改正によってなされています。これまで清算の手続きは法律上決まっており,選任の公告⇒亡くなった方の債権者への請求をするようにという公告・相続人を探す公告(ここでの公告とは官報に記載するというもの,債権者は判明している方は個別連絡)等がなされます。これは順を追って決まった期間を経過しつつ行うため,終了には少なくとも1年近くかかります。改正により,期間の短縮を図るために同時並行で先ほどの公告手続きをおこう事になります。行う手続き自体は同じなものの同時並行で進めることで短縮を図るという制度になります。

 相続人がらず内縁の方などに財産を写すことを考える特別縁故者への財産分与等はそのままですから,あくまで手続きが使い勝手を良くしようというものと言えるでしょう。

 

 所有者不明土地などは財産管理をする方がいない状況であることが多いこともあり,これらの制度の活用を場面を考慮して行う必要はあります。ただ,こうした場面以外でもこれらの制度を活用することはありえますので,場面を考えて何を使うのかを考えていくようになります。

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