法律のいろは

学校や保育園などの施設にある遊具の管理などの注意点とは?

2022年2月19日 更新 

 学校や保育園内には,子ども達が遊ぶための滑り台やブランコなどの遊具などの設備が設置されていることが多いと思います。子ども達が外で体を動かして遊ぶ上では欠かせないものですが、同時に年齢の小さい子供ほど、遊具を使って遊ぶときに事故に遭うことが増えてきます。

 今回は、そういった子供たちが遊ぶ遊具の管理などについての注意点について取り上げます。

 

〇遊具の設置・管理をする上での注意点とは?

 滑り台やブランコなどの遊具を設置したあと、まずは気を付けるべきこととしては,遊具の安全性などに問題がないかどうかということです。昔あった,回転ブランコは回転する軸を中心に円形に複数のブランコが吊り下げられており,軸が回転するにしたがってブランコが回り、次第に傾斜して上昇するというもの(Wikipediaによる)です。これは転落事故などが相次ぎ、実際に裁判になっているケースも見られます。

 こういった,そもそもの遊具の構造などから,安全性が疑われる場合もありますが,実際に多いのはその後メンテナンスがしっかり行われておらず,老朽化したり,重量がかかる部分が弱くなっていたりしてけがにつながるという場合ではないかと思います。

 このように,遊具の設置や保存の仕方に瑕疵があることで,それを使った子供が怪我を負ったという場合には,遊具の占有をしているところがまず第一に損害賠償責任を負います。占有管理をしているところがメンテナンスをきちんと行っていたなど,けがなどが起きないように必要な注意を行っていたことを証明したときは,遊具の所有者が第二次的に責任を負うことになります。この所有者の責任は管理などに過失がなくても負うことになる,重い責任になります。

 実際のところは,遊具の占有をしているところと所有者が同じであるのが普通でしょうから,結局のところ,遊具を設置・保存の仕方に問題があれば,学校や保育園が責任を負うことになります。

 ですから,遊具を設置・管理している学校や保育園としては,定期的に遊具の安全性に問題がないか,検査・確認する体制を整えておくことが必要といえます。学校の設備・施設などの安全点検については,学校保健安全法で,学校の施設・設備の安全点検を実施しなければならないとされています。また同施行規則で毎学期1回以上,児童生徒が通常使用する施設・設備の異常の有無について系統的に行われなければならないとしています。

「学校における固定遊具の事故防止のための留意点」(日本スポーツ振興センター)に,定期点検を行うにあたっての着眼点等が記載されていますから,参考にされるとよいでしょう。

 

〇子どもたちが遊ぶにあたって学校や保育園が注意すべきこととは?

 子どもたちが初めて遊具を使って遊ぶにあたっては,すでにこれまで家庭でその遊具を使用して遊んだことがある場合は,改めて遊び方を説明する必要がないかもしれません。しかし,実際のところは正しい使い方がよく理解されていないことがあるので,使い方を説明した上,低年齢の子供の場合は保育士など大人の立ち合いがないと使えない,といったようにして事故発生を未然に防げるようにしておくことが大事です。

 子どもたちだけで遊具を使って遊ぶ場合,大人が想像しているのとまったく違うやり方で遊ぶケースが見られます。この場合,前述の工作物責任との関係では,「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があること」との関係で問題になります。この,「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があること」は,裁判例では土地工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうとされています。そして,安全性を欠くか否かについては,工作物の構造,本来の用法,場所的環境や利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべきものとされています。本来の用法がどうであるかとの関係では,その工作物を利用してけがをした人が幼児や小学生などか,中学生以上かによって判断が異なってくることもありえます。逆さ飛び込みが禁止されている旨の警告板が4枚設置されている流水プールで,逆さ飛び込みをして頚髄損傷の怪我を負ったというケースでは以下のように判断しています。すなわち,この施設では,警告板の設置のみで,館内放送で飛び込みが禁止されているとの放送をしたり,プールの周囲に柵を設置するといった飛び込み防止のための措置をしていませんでした。しかし,けがをした生徒は既に5年ほど前から当該プールを利用していて,中学校3年生であること,基本的には流れに任せて利用する,親子で水と戯れるといった利用方法であることを認識できた等の理由から,前述のような措置まで取る必要がなく,通常有すべき安全性を欠くとはいえないと判断しています(名古屋高裁平成24104日判決)。

 ですから,張り紙をしていて遊具の使用について警告をしていても,特に幼児や小学校低学年の場合には十分な怪我が発生しないような措置をしていたとされないことがありえます。古い裁判例ですが、小学校にあった遊動円棒で、柱が腐ってきていたことから,一時に3人以上乗らないよう教員から生徒に注意をし,円棒支柱に禁止と記した板を打ち付けていても、9歳程度の生徒との関係では必要な注意を尽くしたといえないとしています。この点注意が必要です。

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