法律のいろは

養子縁組の死後離縁制度とは?問題となるケースと許可の基準とは?

2022年3月26日 更新 

 法律上一度養子縁組をした後で,養親・養子の解消をする制度として離縁の制度があります。原則は協議によるところですが,一方がなくなっている場合には家庭裁判所の許可を必要としています。許可の基準は法律では定められていないので裁判所の裁量によることになるかと考えられます。一説によると,個人の間の関係で作られた関係が一方がなくなることで崩れ,養親子関係を維持するのが不当である場合に死後離縁を認めたもの・生存している方の恣意的な離縁を規制するために,家庭裁判所の許可を要求したものとされています。

 

 比較的最近の死後離縁の許可が争われたケース(東京高裁令和1年7月9日決定,LEXDB25566540)が存在します。このケースでは1審の家庭裁判所では不許可とされたものが逆転して許可されたものです。1審では養子縁組自体が縁組をする意思を欠いていて無効である・養子縁組自体が無効であるのだから離縁をするものがないから却下(不許可)すると判断をしたものです。これに対して,2審では養子縁組自体は有効であることを前提に不許可とする事情があるのかどうかを検討し,それがないために許可をしています。ここで不許可とするかどうかには,法律で定められた血族間の道義に反した恣意的な申立かどうかという点から判断しています。

 

 養子縁組を離縁するうえでは養子縁組が有効に成立していないと離縁する対象がなくなります。養子縁組が成立していないというのは縁組をする意思がないこと・関連して縁組を判断するだけの判断能力がないことが挙げられます。既に裁判例上,相続税の節約その他の目的と養子縁組をして親子関係を築く意思は併存する(つまり,これらの目的があっても縁組意思がないということにはならない)ため,孫を相続対策・その他の目的で養子縁組をしても,縁組自体は無効となりません。このケースの2審では養子として遺産分割協議に加わった点を縁組意思が存在する理由として挙げています。

 先ほど取り上げたケースでは,孫を祖父が養子にしたもので祖父(養親)の相続開始後に遺産分割協議が行われた後で,死後離縁の許可の申し立てがなされたものです。このケースでは孫養子にあたるため祖父の死亡後に養子縁組を解消したとしても,法律上の扶養義務を負う関係は変化しませんし,法律で定められている血族関係(親族関係)も変わるものではありません。そのため,扶養義務逃れのための離縁とは言いにくいという事情がこのケースではあります。祖先の祭祀逃れというのも同様に当てはまりにくいという事情があります。2審の判断ではこうした要素の有無や縁組解消が親族間の脅迫行為などに基づくものであるのかを検討しています。

 

 ここからすると,養子縁組による親子関係を設けることで負うことになった義務逃れのための離縁申し立ては恣意的なものとして不許可にされる可能性があることを示しています。相続に加わるためになされた養子縁組で遺産分割協議後に行われるケースで事情によってはこうしたことに至ることもありうるでしょう。もっとも,縁組意思が問題になる場合には承諾なく代筆がなされていたケース・判断能力に大きな問題がある場合になり,相続・遺産分割でトラブルが発生している場合には,そもそも養子縁組の有効性が大きな問題となる可能性が高くなります。

 いずれにしても,死後離縁についても許可をめぐって問題が生じかねない場合もあるので,不許可となる事情が存在しないのかの確認は重要になります。

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