法律のいろは

亡くなった方が所有していたわけではない位牌などの祭祀承継財産引継ぎはどうなるのでしょうか?

2022年3月29日 更新 

 お墓や仏壇・位牌などの弔いに関わる財産を祭祀承継財産と言います。法律上,亡くなった方が所有している祭祀承継財産は他の遺産とは別に誰が引き継ぐのかを定めるという制度が定められています。相続によって引き継ぐ財産は,亡くなった方が所有していた財産であることが前提となります。遺言で他の方が所有している財産を誰かに引き継がせるということを定めることはできますが,この場合には相続人が引き継がせる義務を引き継ぐことになります。言い換えると,法律で相続について定めている話では,亡くなった方が所有していない財産については解決ができないことになります。

 法律で定めている内容は,まずは遺言での指定⇒慣習で祭祀を引き継ぐ方⇒慣習でも不明な場合には家庭裁判所が定めるという形になります。先ほどの亡くなった方が所有していないものについては話がつかない場合に家庭裁判所に判断してもらう対象には含まれないことになります。もちろん,親族の間で話し合いにより解決を図ることは可能です。

 

 比較的最近に今述べた点が問題になったケース(東京高裁平成31年3月19日決・LEXDB25564924)があります。決定など記載の文面からすると,亡くなった方の子どもの一部と他の方・亡くなった方の配偶者間の対立から,祭祀承継者の指定とともに祭祀承継財産の引き渡しを求めたものです。この中には,亡くなった方が生前に取得したもの(亡くなった方の所有するもの)の他に,死後別の方が購入したもの(位牌その他)は亡くなった方の所有するものではないことを前提に判断されています。

 このケースでは,法律上は慣習や遺言がある以外には家庭裁判所の判断によると法律上されていますが,特に1審では相続人の間の合意によって祭祀承継者を取り決めることができる・実際に取り決めていることを前提に祭祀承継者の合意がそれまでのやり取りから存在すると判断しています。2審でもやり取りその他から同様の結論に至っています。明確な合意がない中ではやり取りから考えていくことになりますので,大きくは変わらない判断に至っているものと言えます。

 ただし,亡くなった方が所有していない位牌などの財産については,1審・2審ともに家庭裁判所の判断で,その財産の引き渡しなどを命じることはできないとしています。関連して,2審の段階で亡くなった方自身が所有していない亡くなった方の遺体について祭祀承継財産(亡くなった方が所有していたもの)に準じて祭祀承継者が引き継ぐべきという言い分が出されていましたが,排斥されています。これは,判例上,亡くなった方の遺体はどなたも権利を持っていないという意味で亡くなった方の所有しているものにはなりませんが,慣習から祭祀承継者といえる方の物となるという判断を出している(厳密には高等裁判所の判断を是認している)ものがあります。他に祭祀承継者が引き継ぐものに準じてと述べる見解もあたことからの言い分と考えられます。ここでいう遺骨とは別のものという理解を前提にした判断ということではないかと思われます。

 今後亡くなった方の所有ではない点で遺骨と他のものに違いがないという判断が出ないとも言えません。ただ,今回のケースのように他の相続人が所有している可能性のあるものについては話し合いで解決をすることが法律的にも厄介な問題に至らない一つの道ということはできるでしょう。

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