やや特殊な種類の遺言として「危急時遺言」というものがあります。「危急時遺言」には船が遭難した際のものとそれ以外の一般的なものが存在します。一般の「危急者遺言」が使われる場合として,遺言をのこそうとする方をが重病にかかっていて式が迫っている場合が考えられます。
一般の「危急時遺言」は,証人が3人以上いること・そのうち一人の方に遺言を遺そうとする方が遺言内容を伝えることが必要とされています。「危急時遺言」については日付は問題となりません。作成後20日以内に家庭裁判所に申し立てを行い,確認を経る必要があると規定されています。ここでの確認を経たとしても遺言が有効である(無効リスクがない)というわけではなく,有効性が問題になる場合には別途裁判手続きでの解決が必要となります。ちなみに,公正証書遺言を作成するだけの時間的な余裕があるのであれば,もちろん遺言をされる方の健康状態などを見ての話になりますが,こちらの方法を考えることもありえます。
ここでの確認とは,遺言書の内容が遺言をした方の真意であることの心証が得られればいいと裁判例の中では考えるものがあります。ここでの心証は確認を行う家庭裁判所の裁判官が持つ必要がありますが,実際にどの程度のものであればいいのかは具体的なケースによって変わってきます。実際の資料収集は裁判所サイドでも行います。そのことを担う家庭裁判所調査官の調査の方法としては,概略,遺言をした方が生存をしているのであれば直接面談で確認を行う・医師や看護師に照会を行いう,といったものがあります。このほか,亡くなっている場合は特に,証人となった方・遺言をした方の親族や遺言により利益を受けた方等のからの聞き取りを通じていくこととされています。
特に遺言の内容から見て相当不合理な点があり遺言をした方の印利かどうか疑わしさが残る場合には「確認」を得られるのかどうかが微妙になることもありえます。確認について,家庭裁判所の口頭裁判所の判断が分かれたケースもそれなりに存在します。比較的最近のケース(東京高裁令和2年6月26日決定・判例タイムス1485号109頁)についても,1審で遺言者が遺言内容を理解し口頭で伝えた・真意であることには疑いがあり確認を認めたなったものに関して,概ね同様の事実を認めつつも評価が異なることから確認を認めたものが存在します。
決定や1審の内容からすると,おおよそ病気の症状が重くなった場面で時間がなく「危急時遺言」を作成し,遺言をした方の生存中に調査が行われたものです。また,遺言内容は子どもの一人に財産を引き継がせるという割と単純なものでした。1審では医師や看護師への紹介の結果(遺言をした方の意識状態など)・家庭裁判所調査官が遺言をした方と面談調査をした際の反応(作成の経緯や内容について回答が質問する都度異なっていた等)から,遺言内容を理解することへの疑義を示し真意に基づくものとはいいがたいと判断しています。これに対し,2審では証人となった方(うち一人の行政書士の方)の作成時等の証言を信用するとともに,作成までの経緯から見た遺言の内容が合理性を持つのかどうか・医師らが検査した際の遺言をした方の意識状況が簡単な内容のものならば理解できる帝都ではあった,点を考慮して,真意であるとの心証を持てると判断しています。
「危急時遺言」をわざわざ作成する場合には,遺言をする方自身急激に体調が悪化していることも考えられますので,作成時と調査時点では判断能力が異なる可能性も考えられるところです。作成前にどの程度の意識状態なのか・遺言の内容から見て内容がわかるのかは重要な事項となります。当然一人の方に財産を残すよりも複数の方に負担を負って残す場合の方が複雑になり,内容がわかるだけの意識状態も高いものである必要が出てきます。内容から見て作成経緯が合理的なものと言えるかも,遺言をする方の真意なのかどうかには大きくかかわってきます。作成時に立ち合い,うち一人は遺言内容を聞き取る証人のかたもいわゆる士業であればその信用性が高くなる(証言の信用性という意味)点はありますが,作成時点での遺言をする方の様子や内容を分かっているのかの確認をきちんと行っていることが前提となります。
この種の遺言を作成する場合には上記の点も注意をする必要があるでしょう。
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