法律のいろは

有料老人ホームとの契約締結が,判断能力がないことで無効となったケース

2022年5月23日 更新 

 高齢の方については生活解除や介護その他のサービス提供を受けることがままありえます。その際に在宅型のサービスや居住型のサービス等が存在するところですが,特に高齢の方(障がいを持っておられる方もその程度によって)は状況によりその判断能力に大きな疑問だ出ることがありえます。この判断能力はその状況次第では遺言をするだけの能力につながるところですが,あくまでも法律的な評価になります。その前提となる健康や認知状況がどうであるのかが問題となります。

 そこでは,認知状況や様子に関する意思の判断やケアマネージャの方の所見・介護度の判定における所見などの記載内容が問題にはなってきます。比較的最近有料老人ホームなどを営む会社と高齢の方の親族との間で,入居や介護サービスなどに関する契約の有効性や支払ったお金を会社側が不法にとったものなのかどうなその他の争点が存在するケース(大阪地裁令和3年2月10日判決LEXDB25569300)が存在します。争点は多く存在しますが,利用などの契約に関わる有効性と判断能力の話を触れておきます。

 

 判決文からは,生活保護を受けていた高齢の方が入居契約が存在しそのサービスを受けていた施設運営会社などに対し,保護費を不当に取り上げられ,劣悪な環境におかれたということでお金の返還請求・損害賠償請求等の請求をするもののようです。このケースでは,お金の返還請求をする際には契約が存在することから,それが無効となる・無効となる場合には,サービスを受けているところからそれでも返還を認める事情が存在するのかが問題になります。

 判決では,各高齢者ごとに(請求は複数の方からなされています),契約書が存在することから契約の存在を前提に無効となる原因があるのかが判断されています。そこでは,先ほど触れました契約締結(サービスを受けるようになった)の時期より少し前における健康状況や認知能力の状況を,各人ごとに介護や医療の記録や資料などから判断しています。判断能力がないと判断された方そうではない方それぞれいますが,認知症の診断や自立生活支援度の状況や内容・意思伝達や話の理解がどの程度理解できるのかという点の指揮や判断内容などを踏まえて,認知能力がどの程度あると考えられるのか(大きく制限を受けた状況なのかどうか)を判断しています。そのうえで,契約内容が単純な内容であれば,比較的認知能力が少なくとも判断が可能であるとされるものの,複雑な内容(どこまで行けば複雑なのかという問題があります)であれば,それだけ認知能力が大きい必要があります。

 このケースでは,会社側の用意する居宅に居住して,介護・看護・居宅介護支援サービスを受けるという内容(これに対して対価を支払う)のものだから,特段複雑ではないものであるとしています。言い換えると,そこまで判断能力が大きくなくても有効になりうることを前提としているものと思われます。サービス提供を受けそこから利益を得ること・特段複雑なスキームが取られていないことを前提とするbのかもしれません。いずれにしても,ここを踏まえて有効・無効を個別の方ごとに(契約が有効かどうかは契約を締結したその方によって異なるため)検討しています。一部の方で無効とされています。

 

 ただ,仮に無効としてもサービスを受けていることから,その適正対価分は相手が取得しても返還を求められないので,実際にどうなのかも検討しています。ちなみに,損害賠償請求に関しては主張されている劣悪な環境におかれていたというのであれば,介護などの契約での違反などがあるため,有効でサービスを受けていたとしても,損害賠償に問題が生じます。やや面倒な話ではありますが,このケースでも仮に返還を認められないケースだから即お金の請求が認められないというわけではありません。

 高齢の方が契約で関わる場面は意外とありえますので,こうしたトラブルが起きないように財産管理や任意後見などで備えておくことも重要かと思われます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。