法律のいろは

遺留分侵害の有無で問題となる価格評価はどうなるのでしょうか?

2022年5月21日 更新 

 遺留分侵害額請求は相続開始後に問題になりますが,生前の対策で侵害になる可能性があるのかどうか・侵害額がいくらになるのか争いになる場合には,どのような価格評価がなされるのかが問題になります。遺留分侵害がなされているのかどうかは相続開始時点の金額評価になります。

 

 相続を考える上での評価の代表例は,不動産についての固定資産税評価額(不動産)や相続税評価(財産評価基本通達で定めた内容による評価額)が存在します。ただし,評価方法はここで定めた方法のみによるわけではありませんので,相続税が生じるのかどうか・その対策で問題となる相続税評価とは別の評価額も考える必要がある点も頭に入れておく必要があります。

 

 このうち,不動産については,固定資産税の評価額(倍率評価)や路線価等がある一方で簡易査定による評価もあります。費用がかかるものの正確性確保には不動産鑑定を使うこともありえます。評価基準が争いのある相手方と同意が可能であれば問題はありませんが,異なる場合には不動産鑑定や上場されていない会社の株式の評価もどのように行うのか(公認会計士に依頼して評価を故なうのか)が問題になります。費用面の問題もあるので,どこまで行うかは問題となるでしょう。

 情状査定ない会社の株式の評価は,財産評価基本通達において会社規模に応じて原則的な評価方法と株主の属性によっては例外的な評価方法によることもありえます。原則方法は上場企業に匹敵する会社をその類似する業種に比準して考える方式(実際には中規模や小規模の会社でも一定程度取り入れた算定が可能)や純資産額(帳簿価格による純資産方式)・例外的方法として収益方式の一つである配当還元方式というものが存在します。株式の評価には批准方式・収益方式(将来キャッシュフローの見積もりによる方法なども存在)・純資産方式というものが存在し,純資産方式自体に時価評価に基づくものも存在しますので,方法自体は多数存在することになります。

 

 ちなみに,会社の事業引継ぎのための遺留分の特例制度を使う際に,対策時点で遺留分の対象となる金額を固定する方法が存在します。その際に必要な弁護士・公認会計士・税理士の方が行う相当額であるという証明を出す際のガイドライン(経営承継法における非上場株式等の評価におけるガイドライン)というものが存在します。中小企業庁の定めたもので,評価に際しての留意点や評価方法などが記載されています。ここにもあるように評価方法は様々存在するところですし,実際に相続開始時点での評価についても様々な方法が存在します。

 仮に評価方式を変えることで大きく金額が変わればそこまで行う意味はありますが,その方法(一般的なものやそのケースでの)信用性の確保やコスト(時間や金額)を考えておく必要があります。とりあえずは,先ほど触れた相続税評価額を参考として考えていくというのも特に非上場会社の株式については考えられるところかと思われます。貴金属については相場がありますからそこが基準になるでしょうが,骨とう品や美術品は評価の基準が確立していませんので,鑑定業者の評価を出し合ってみる・そのうえで中間額等の合意を探るなどしていく必要があります。

 いずれにしても,財産評価の方式は複数存在しモノによっては方法が確立していない・手間などから見てどこまで争うのか何を採用するのか,対応するのかを考えておく必要があるでしょう。

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